2020年2月20日木曜日

脳にいいことだけをやりなさい(その1)

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脳にいいことだけをやりなさい
マーシー・シャイモフ
Column 2020 No.81

 1月の中旬、脳科学者の茂木健一郎氏が来広、講演会がありました。脳に少なからず興味を持つ私は、早くから申し込みをして参加しました。1時間半、ユニークな観点から、ユーモラスな語り口で、脳の働きについてなかなか興味深く話されました。

 “脳は目新しいことが好き。生きることを楽しんでいる人の脳は活性化している…それには中枢神経系に存在する神経伝達物質であるドーパミンが影響している。ドーパミンは生きる意欲を促し、達成感・爽快感・歓び・感動をもたらす。ドーパミンを出すためには、意図的に、やりたいこと新しいことに、挑戦することがカギ…”辺りの話題が大変印象的でした。

 私は早速、ずっと以前から求めていた、茂木氏の本…他、他の学者の脳に関する数冊の本を取り出し、すべてもう一度読み返しました。冒頭のフレーズは、茂木健一郎訳、マーシー・シャイモフ著「脳にいいことだけをやりなさい」の書の題名からの引用です。次のフレーズは、その本の訳者の茂木氏の言葉です。

どんな手を使ってもいいから“楽観回路”“私は幸せ回路”を働かせることが
ポイントです。何せこの回路が、元気できちんと機能していれば、
人生すべてがうまくいく…と言っても過言ではありません

 親業や、親業が主宰する人間関係講座では、“欲求充足”すること、つまりやりたいことをやる、心が喜ぶことをする、ということを大切に考え、理論のベースに置いていますが、茂木氏いわく、実は“わくわくと生きていくことは、脳がそれを欲しているのだ”というフレーズに接して、親業も、脳科学的なアプローチをとっていることに改めて気付き、なるほど!と、膝を打つ感じがありました。

 手持ちの、脳に関する本を読み返して、大変興味深いので、私なりのフレーズで8項目に連ねて、脳のことを纏めてみることにしました。次回のコラムはその続編になると思います。

1 脳は楽しいことが好き
2 脳は刺激的な学習をすることが好き 
(※No3以降は次回のコラムに続きます)
3 脳の衰えを老化のせいにしない~脳は齢を重ねても育ち続ける~
4 愛は脳を元気にする
5 脳の傷は癒せる
6 脳はだまされやすい
7 脳は支配できる~脳は書き換えることができる~


1 脳は楽しいことが好き

 楽しく幸せな回路を働かせると“脳の活性化”に大きく影響を与えていくようです。楽しむと、脳からエンドルフィン・セロトニン・オキシトシン・ドーパミン…と言ったような前向きな気持ちになる化学物質が分泌され、それを細胞が受け取ると、私たちは幸せ感に満たされて、脳がさらに活性化に向かうようです。だから、歌を歌ったり、ダンスをしたり…何でもいい、自分の心がわくわくすることをやることの意味・大切さがあるのですね。

 私の友人に、とても楽しみ上手な人がいます。80歳を過ぎた女性ですが、100数名の会員を持つ、某“エッセイ同人誌”の編集長です。「生きていれば、楽しいことがいっぱいあるよね!」…が彼女の口をついてよく出てくる言葉です。彼女の周りの友人は、色々なジャンルの人たちで、年齢も30代40代50代…と様々です。「ちょっと疲れたわ!」と言いながらも、おつき合いを心から楽しんでいます。頭脳は明晰で、お洒落で、年齢を全く感じさせません。いわゆる脳科学者の言う、ドーパミン…等の化学物質が起動している人物でしょう。

成功が、幸せのカギではない。幸せが、成功のカギなのだ。
今やっていることが好きになれば、成功はおのずからもたらされる
アルベルト・シュバイツアー


2 脳は刺激的な学習をすることが好き

現代のメデイアの中で流布している快楽主義は、チョコレートを口に入れれば甘い…程度の快楽主義の単純な図式にとどまっている。雑誌などに掲載されている記事も、贅沢なレストランや、リラックスできるスパと言ったようなあまりにもストレートな快楽の提示だけである。そのような現代においては、脳の中に潜んでいる「学び」に関わる快楽原理の奥深さが見えにくくなっている。私たちは、“快楽という井戸”を深く掘ってみることを、忘れてしまっている
茂木健一郎

 私自身、入学試験や学校の期末試験での勉強には、あまり喜びを感じたことはありませんが、自分の興味あるサークルでの学びや、好きなジャンルの本に出逢うと、時間の経つのも忘れて夢中で読み進む、あの充実感・ときめきは、何にも勝る喜びでした。茂木氏の言う、いわゆる真の快楽原理を生きていた気がします。

「…単に嬉しいことが続けばそれでいいというわけではない。ある程度のメリハリがなければドーパミンも放出されないし、強化学習も生じない」と、茂木氏は述べています。確かに、一人ひとりの中に存在する“成長欲求”が満たされる歓びは、必ずしも安易なもので満たされるとは限らないと思います。読書はともかく、人生万般、すべての体験からの学びには「苦」もあり、「痛み」もあります。しかし、それら苦労・痛みを体験し乗り越えたときに、初めて得られる魂からの喜びこそが、茂木氏のいう、脳が喜ぶ強化学習に繋がるのではないでしょうか。

 医師の山田規畝子氏は33歳の時、脳出血により脳梗塞を併発、高次脳機能障害を発症しました。彼女は著書「壊れた脳 生存する知」(講談社)の中で、“どんな脳でも学習する”…と述べており、以下はその一節です。

“忘れっぽくなっちゃったわ”と、老化のせいにしないで、思い出そうともがくべきだ。もがく習慣をつけておくと思い出すことがうまくなるような気がする。記憶を引っ張り出す糸口が、聴覚だったり、視覚だったり…と、人それぞれだろうが、思い出そうとするために、脳の中の記憶の部屋を、かき回して探すのだから、脳が一生懸命働くことは想像に難くないだろう

 脳には、まだまだ興味深い真実が横たわっています。次回のコラムを楽しみに!

*次回のコラムは3月20日前後の予定です。

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