2015年6月20日土曜日

一度とてもほめられるとそれだけでふた月分気分よく過ごせる

Column 2015 No.25

一度とてもほめられるとそれだけでふた月分気分よく過ごせる
                                                              - マーク・トウエイン-

 「トム・ソーヤーの冒険」の作者の言葉です。マーク・トウエインでさえ、ほめられたら2ヶ月も気分よく過ごせるというのです! 私たちも同じで、ほめ言葉をもらったら“何だか元気でるよねえ”とその日がわくわくと過ごせたり、おまけに“私って素敵なんだあ…”とちょっと自信が湧いてきたりしませんか。

 もっとも自分への“自己価値感”が、ある程度ある人であれば、まわりからのほめ言葉に期待をすることはあまりありませんが、多くの人々は周りの人たちに認めてもらいたいと、ほめられることを少なからず期待しているものです。ところが日本人の多くはほめることは勿論、ほめられることも苦手ですね…。
 「あなたの今日のTシャツすてきね!」
 「いえいえ!安物よ!」…といった具合に(笑)

 本当は嬉しいんですね。でもちょっと照れたり、それが日本人特有の奥ゆかしさだと誤解したり…要はほめられることに慣れていない…。こんな場面で、もし「そう!嬉しい!」と答えることができたとしら、自分への肯定感に大きく繋がるでしょうし、きっとほめた人も心地いいはずです。

 「親業」では、実は“ほめる”という表現は避けています。日本の武士道に“褒めて遣わす”という言葉がありますが、その言葉には、はっきり上下関係が表れています。しかし現在でも“ほめてやってください”とか“ほめてあげる”という言い方をする人は結構多いですね。やはり上下関係の匂いが感じられます。

 ほめてあげるのではありません。相手の行動が自分にとって嬉しいから、幸せな気持ちになったから、その気持ちをその喜びを、相手に対して率直に自己表現していくのです。例えばお手伝いをしてくれた子に「えらかったね!」とほめていくのと…「皿洗いを手伝ってくれてお母さん大助かりだよ!」とお母さんの正直な喜びを伝えるのとでは、子どもの受け取り方には大きな違いがあるのです。

 親は、子どもが親の気に入る行動をとった時、褒美のように「えらいね!」「いい子だね!」と評価的に褒めてしまいます。お手伝いしたら褒めてもらえる…つまり親に気に入ることをしたら愛される…そのように子どもが受け取けとると、子どもの心はとても不安定になるのです。何故なら、親の期待に添えない時の自分に対する親の失望が怖いのです。

 親が子どもに権力(暴力・非難・命令・脅迫…等々)を行使することで、子どもが親に屈して“親にとって都合のいい子”に嵌ってしまう危険性があることは理解できると思います。しかし褒められながら、親の顔色を伺い、いつの間にか“いい子の枠“に嵌っていくこともあり得るということです。いずれにしても“いい子の枠”に嵌った子供は、素朴な冒険や体験をすることに極端に臆病になり、いわゆる子供時代に必要な試行錯誤ができないために、自分軸が育たず、自立を大きく阻まれるのです。

 さて、親業が大切にしている「肯定の感情を表現する自己表現」をもう少し詳しくお伝えしましょう。子どもや周りの人の行動を見て、あなたの心が安らかになったり、嬉しくなったり、幸せな気持ちになった時に、その喜びを正直に相手に自己表現してみましょう。講座の中で、あるお母さんが言いました。「うちの子、いい所なんにもないんです。ほめるところなんか見当たりません…」と。実はいっぱいあるはずなのですが、お母さんが気づかないだけなのです。例えば

 学校に行けない子供が多い時代 毎日学校に通っている
 食が細い子どもが多い時代 毎日食事を美味しそうに食べる
 勉強は今ひとつだが 友達が多く毎日元気に楽しく遊んでいる…等々

 お母さんにとってはそれは当たり前と思っているから格別喜ぶことでもない…と。 いいえ!それをあたりまえと思ってしまっているお母さんの不感症が問題であり、実はそれが子どもにやる気を失わせている大きな原因ともなっているのです。そこに気づいたお母さんは子供に思い切って表現してみました。「K君 お母さんが作ったお料理を美味しそうに食べてくれるじゃない!お母さん作りがいがあって元気でるよ!」…と。

 するとK君は一瞬、“はと豆状態”になりましたが、その日以来、無気力だったK君が、日を追うごとに活気に満ちてきたといいます。勿論、お母さんもこれまで見過ごしてきたK君の行動にしっかり注意を払って表現してみたのです。
 「学校に毎日元気で行ってるK君を見てるとたのもしいよ!」
 「K君の笑顔はお母さんの心を和ませてくれるのよね!」というふうに。

 古(いにしえ)から「長所と短所はうらおもて」ということが言われていますがこれは真実です。例えば“勉強が苦手な子は、スポーツが得意だったり、友達に人気があったり、けっこう機嫌がよかったりします”“無口で内向的な子は、追い込みさえしなければ、じっくりと物事に対処できたり思いやりがあったり、人の心を読み取ることが得意だったりします”このように短所と言われる裏側には必ず輝く長所を持っているものです。

 子どもの個性や輝きに敏感になりたいものですね! その子の輝いているところ、その子の得意な側面を表現したり、勇気づけていくことで、その子の可能性はぐ~んと広がっていくのです。その子の苦手な部分ばかりを指摘していると、輝きまで失いかねません。

 会社を辞めていく人々の大半は、低賃金や重労働が理由ではなく、自分の価値を認めてもらえなかったことを理由に挙げています。もし仲間や上司から「君の援助は大きかったよ!」「助かったよ!」「~してくれて感謝してるよ!」といった肯定の感情表現が日頃からあったら、その人はやる気や生きる元気を失うことはなく、会社の為にも自分の為にも、全力投球できたのではないでしょうか。

 日本の男性は一般に“ほめ下手”な人が多いですね。例えば 家事・子育て・夫の世話・舅、姑の世話・近所や親戚との付き合い・学校関係…等、それらを必死でこなしている妻にどれだけの人が感謝の気持ちを表しているでしょうか。生活費を稼いでやってるんだから当たり前…という気持ちがあるのかもしれませんが、その辺りで夫婦間の関係が壊れていくケースを私は沢山見てきました。

 コラムNo11でご紹介した、奥さまにお手紙で送られたご主人さまの感謝のメッセージをもう一度ご紹介しましょう。メッセージを読まれた奥様は感動で涙が溢れたそうですよ…。奥様の心はどんなに元気になったことでしょう

 「暑い日が続きますがいかがお過ごしでしょうか。汗だくになりながらも頑張っておられる姿をいつもまじかに拝見し、陰ながら大変感謝しております。なかなか口に出しては言えないので書面にてお礼を言いたいと思います。前向きな人生と刺激をいつもありがとう!」

 最後に同じく受講生の方々の<妻から夫への肯定のメッセージ>も紹介してみましょう。

 「私が夜遅く帰ってきたときに“ごくろうさん”といって迎えてくれるでしょう。一度に疲れが取れる気分よ!」

 「私の悩みや愚痴をじっと聴いてくれるでしょう。とてもすっきりしてまた明日も頑張ろうという気持ちなるのよ。感謝よ!」

 「今朝、会場まで送ってくれたでしょう。早めにいい席が取れて、とても楽しめたの。助かったわ!」

 心がほのぼのとしますよね! このように、愛や感謝の気持ちは、心で思っているだけではなくそれは、表現されてはじめて相手に伝わるものなのです。

*次回のコラムは7月20日前後の予定です。