2020年11月20日金曜日

本当の“自分らしさ”は自分を生きることから

 Column 2020 No.90


 皆さんは「自分らしさ」をどう定義しますか。これまで講演依頼などで「自分らしく生きるには」辺りのテーマを頂いて、そのつど“さてさて、自分らしさって何だろう…”と、立ち止まって考え込んだものです。

 私たちも周りの人から「こんな考えをするところってあなたらしいわね!」と言われたり、我が子に「あなたらしくない行動ね!」「中学生らしくちゃんとしなさい!」「少しは女らしくしなさい」」…などと、“らしく”の定義が明確ではないままに使ってきたのではないでしょうか。

 「…らしい」という表現の背景には、表現する人の中に“こんな人!”といった思い込みがあったり、無意識の願望があったり…するのかもしれません。しかし不明確な表現だけに、それを受けとった人は“…らしい”にこだわりが起こったり、わけの解からないままに、それに基づいた自分像という堅苦しい枠組みを作る原因にもなる危険性を感じます。自分の思い描いた枠で第三者を判断したり、人を“らしさ”で括(くく)ってしまう権利は誰にもありません。

他人が笑おうが笑うまいが 自分の歌をうたえばいいんだ
岡本太郎

 ほんとうにその通りだと思います。閉じ込められた不自由な「…らしさ」ではなくもっと自由に真の自分になる為の「…らしさ」を求めていきたいものです。その為には、自分の本質に気づき、つまり自分はこの人生でどう生きてどうなりたいと思っているのか。何をしたら本当に魂が喜ぶのか。何がやりたくて何がやりたくないのか…。正直に自分を感じ本音と対峙してみることからが出発です

 菊が決して薔薇にはなれません。薔薇が決して百合にはなれません。花々は、まさに誰に媚びることなく、堂々と個性を輝かせて自分を生きています。ひたすら自分の花を咲かせています。

あなたは際立つ(きわだつ)ように生まれてきたのに
なぜ周りに合わせようとするのですか。
君よりも君らしい人なんてこの世には存在しないんだ
ドクター・スース

 「…らしさ」を決して他人に手渡さないで、本当の自分らしさを自分で培っていくために私たちは何ができるでしょう。親業の視点から考えてみたいと思います。

☆ 自分を感じ、自分の感度を信頼して

 感情にいい悪いはありません。自分のありのままの感情を感じていないと、自分の人生で何が得たいのか、どう生きたいのか…は決して掴めないでしょう。その為に大切なことは自分軸を構築することです。他者の価値観や考えに、いつまでも依存したり影響を受けない。今は自信が無くても、自分の感度を信じて自分から来た答えを思い切って生き始めるのです。そう覚悟しない限り自分軸は育たないでしょう。つまり真の自立はできないし、あなたらしさは育たないのです。

周りからけなされ「無理だ!」と言われていた。
でも私は他人に自分の限界を決めさせたくなかった
田臥 勇太

☆ “ねばならない症候群”からの脱却

妻は夫を立てるべきだ
男は一家の主(あるじ)として責任をもたなければならない
女は慎ましく夫・子どもの幸せを最優先にするべきだ
家庭を持っているのだから、自分を大切にするのはあとまわしだ

 ……等々、大分薄れてはきましたが、特に女性は人間味あふれる一人の人間として生きることを阻まれてきた長い歴史がありました。「女、三界に家なし(女はどこにも安住の場所がない)」「嫁しては夫に従い、老いては子どもに従え」…というような俗諺(ぞくげん)があるくらいです。男性も女性も、深いところではまだまだ強固な観念があって、“男の役割”“女の役割”に縛られて生きてはいないでしょうか。役割意識に縛られると、男性も女性も、お互いが自分らしく“自分の人生の主役”になって生きることは難しくなるでしょう。

世界には君以外誰も歩むことのできない唯一の道がある。
ニーチェ

☆ すべきことよりやりたいことを

 「すべきことをやらないと生活は成り立たないではないですか。それは単なる我儘ですよ」…と一蹴されることは多いです。実はその通りです。いきなりやりたいことだけをやって生きていくことは出来ないでしょう。でも「今日はこのことをやりたい!」と思ったら、思い切って仕事を休んで、自分が本当に心が喜び、魂が納得することを本気でやってみるのです。生きている実感が掴めます。

 仕事がない日には、すべきことより“やりたいこと”を、優先順位の最優先にしてみる。すると、あなたの心や体がエネルギーに満ちてくるのが実感できるでしょう。すると不思議ですが“すべきこと”も何だかすんなりと進み始めるものです。自分を不自由にする為の「らしさ」ではなく、もっと自由な自分になることを許し、人間味溢れる、真の自分「らしさ」を求めていきたいものです。

人が奪うことのできないたった一つのこと。それが「自由」。
如何なる状況でも“自分が進む道を選ぶ自由”です
ヴィクトール・フランクル

*次回のコラムは12月20日前後の予定です。