2023年12月20日水曜日

「怒る」と「叱る」は異なります

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Column 2023 No.127

 「上手な叱り方を教えて下さい」これは早くからあった質問です。叱り方についてはすでに他の配信等で触れていますが、今回は改めてお応えしていきたいと思います。

 まずテーマの「怒る」と「叱る」は異なる…という辺りからまとめてみます。「怒る」その人の心情は、相手のためにではなく、自分の中の怒りの感情を相手に対して発散する。つまり怒りを相手にぶつける状態です。

怒るのは感情のまま、叱ることは愛情がないとできない
野村 克也

 Fさんの体験です。「私がよく親から言われていた言葉です:“本当にあんたは自分勝手なんだから!” “言うことが聞けんのならもう何にもせんけ~ね” “あんたがおるけ~こうなるんよ!”…など。 わたしの誕生日にも母は、“あんたの誕生日を祝う日じゃないの!ここまで育ててもらった親への感謝の日よ” と言われて、一度もおめでとう!と言われたことはありません。一方的にいっぱい言われているんだけど、私に伝わってきたのは、ただ、“あんたは駄目な人間!価値がない人間!” ということだけでした。」と仰っていました。

 この事例が示しているのがいわゆる「怒る」ということであり、ただ怒りと蔑視の言葉を子どもにぶつけているだけです。その結果、子どもの心に育つのは、自信喪失感と自己無価値感です。

 一方「叱る」背景にある親の気持ちは、“ここで叱っておかないとこれからの将来に、この子が困ることになるのではないか”…と言う愛情がベースにあります。だから「叱り方」は相手を非難するのではなく、親が心配していることを伝えます。例えば「洋子。宿題をしないでいくことが多いよね。宿題はね。学校で次の授業に入るために大切な課題が出されているのよ。洋子が学校の授業にちゃんとついていけてるのかどうか…お母さんは心配よ」このように、価値観的な問題については、相手を責めるのではなく親の心配を伝えるのです。

 一方、親に影響のある(迷惑がかかる)子どもの行動に対しては、何故困るのかという親への影響と感情を伝えます。例えば「ケンちゃん。玄関に濡れたままの傘をもって入ると、玄関がびしょびしょになるよね。滑って転びそうになりそうでとても怖いのよ」のように。“だからこうしなさい”(提案)は出来るだけ避けて、子どもに考える余地を残します。

 まだ言葉が充分に伝わらない幼い子の困った行動にはどう対処すればいいのでしょうか。例えば “いきなりお友達にかみつく” “砂をかける” “いきなり押し倒す” またよそのお家に伺ったときなど “勝手に冷蔵庫を開ける” “触ってはいけないものを触る”…等々、幼い子はまだ充分状況判断ができないので、困ることを平気でやってしまう年齢です。こんな場面で黙って見ていてはいけません。「やめなさい!」と、毅然と辞めさせ、子どもをそこから離してください。そして子どもが一人になったときに、子どもに言い分があるならしっかり共感をもって聴いてやり、そのあと、何故やってはいけないかを、解かっても解からなくてもきちんと伝えておきます。こんな場面を黙認すると、常習になってそれを繰り返すようになってしまいます。

叱る時も叱られるときも真剣でありたい
松下 幸之助

 親業講座ではトレーニングを含めて詳しく学習しますが、(親業訓練協会とのお約束より)公開ブログではその内容に深く触れることはできませんので、そのさわりをお伝えさせていただきました。

心に届く叱り方のポイント

1 子どもは本来わがままであることを理解しておく

 子どもは自然体である場合、一貫性がなく、わがままで自己中心的です。すべてにいい加減で遊ぶことが大好き、縛られることが大嫌いです。これが健康的な子どもの特性です。
 だから些細なことでしつこく叱ったり、権力を使いすぎると、子どもを追い込み、子供らしさを失わせ委縮させてしまいます。ただ第三者に迷惑をかける行動や、ちょっとした社会のルールが守れない時には、毅然とした態度で伝えておくことは大切です。

2 叱ることが全てではない

 兄弟げんかやおうちでの少々のいたずらは大目に見てあげてください。社会性が育ち、応用力も効くようになります。行動するたびに叱られて育った子どもは、叱られないと行動しなくなる傾向が出てきます。つまり問題行動ばかりに注目すると、その行動を強化することにも繋がります。叱るばかりではなく、色々な対処をしてみて下さい。
 時には黙認してみる。また、困る行動をした時だけに注目するのではなく、出来たときに「出来たんだねえ!」と、認める表現をする。子どもの困った行動の多くは、子どもはいけないことは分かってはいるけれど、その行動がやめられない理由があるものです。「どうしてそれをやっちゃうのかなあ」と、ゆったりと尋ねると、できにくい理由を話してくれます。それを共感をもって聴いていくと、子どもが自分の気持ちを見つめるひとときとなり、子ども自身で解決策が見えてくるということも多くあります。つまり自立へと向かうのです。

可愛くば 五つ教えて 三つ褒め 二つ叱ってよき人となせ
二宮 尊徳

3 命令よりも事実を伝える

 「七時よ!いつまで寝てるの!」と急かせるよりも「七時ですよ!」と、事実だけを伝えてみて下さい。 「ごはんよ!呼んだらすぐに来なさい!」より「ご飯の準備できたよ」。 「早く宿題にかかりなさい!」より「六時よ。宿題出てたよね」。「お風呂掃除してないじゃない!」より「お風呂の掃除がまだできていないね」… のように、事実の表現は子どもの心を傷つけることなく届くのです。

4 変化球で怒りを現すと子どもは追い込まれる

 嘘をつく子どもに「嘘をついてるとやがて泥棒になるんだぞ」とか、「また○○して!もう好きなようにしなさい!」…のように遠回しに表現すると、子どもには明確に伝わりません。また心配なことや困っていることを、言葉で率直に表現しないで、不機嫌な態度で現してしまうことは、伝わりにくい上に、子どもの心に罪悪感を育てます。まっすぐに表現することが大切です。例えば「嘘だとわかってがっかりしたよ」「嘘をつくのはとても悲しいよ」のように。

5 傷つけたと思ったら必ずフォローをする

 親に非があれば決していい訳をしないで、すっぱりと「ごめんなさいね」と謝って下さい。伝えておくべきことがあれば、気持ちを落ち着けて大切に思う価値観を伝えておきます。傷ついている子どもにフォローしなかったために、親との関係も壊れ、その子は心が傷ついたまま一生を終えることもあるのです。

6 尊厳性をもって子どもを育てる

 子どもの心を傷付けないような叱り方をしてください。幼いながらも子どもは真っ直ぐな目で大人を見ています。そして驚くほどの理解能力を持っているのです。

人間はいつも偉大な存在であるという考えを持っておくことだ
松下 幸之助

*次回のコラムは2024年1月20日前後の予定です。

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