2024年12月20日金曜日

リラックスしてしなやかに生きよう

 2025年 講座開講スケジュール 2025年の講座予定を公開しました!

 下村亮子チャンネル『 TRUST YOUR FEELING - あなたの中の答えを信じて 』  

Column 2024 No.139

 この年齢になっても新しいことを知りたいという私の“好奇心”は我ながら素敵だなと思ったりしますが、一方で、知識欲に気合いが入り過ぎてか、やや緊張や強迫感があることにも気づいています。こういうこともあって、“リラックス”という言葉やそれを体現した人生には自身とても惹かれるものがあります。
 今回のコラムでは、まず、このような感覚を思い出させてくれる散文詩のご紹介から始めていきたいと思います。この詩は、私が30~40年前に出逢ったレオ・バスカリア著「自分らしさを愛せますか」の中に掲載されていたものですが、私の中に今も鮮やかな印象として残っている詩です。

 余命幾ばくもないと知った85歳の老人の呟きです。

「もし、もう一度生涯をやり直せるなら、この次はもっとたくさんの過ちを犯したい。完全な人間になろうなどとはすまい。この次生きるときは、私はもっとリラックスしよう。これまでの私よりもっとしなやかに生きよう。それほど深刻に受け止めなければならないことは、そうそうないという事実は、今の私にはよく解かっている。

こんどはもっとクレイジーになろう。そしてもっとむさくるしい暮らしをしよう。もっと色々なことに挑戦しよう。もっと旅をし、山に登り、川で泳ぎ、もっとたくさん夕陽を眺めよう。行ったことのない所をもっともっと訪ね、もっとたっぷりアイスクリームを食べよう。豆ばかり食べるのはもうよそう。

こんど生まれ変わったら、現実のトラブルだけを問題にし、絵空事を苦にするのはやめよう。私は預言者のように、分別をもって清く正しく毎日を生きていた。もちろん少しは思い通りに生きたこともある。でも、もし、もう一度生きられるとしたら、自分が思いどおり生きた時間のほうをもっとたくさん持ちたいと思う。というより、今度はそんな素晴らしい時間以外のほかには何もほしくないというのが正直な気持ちである。

何処へ行くにも私は必ず体温計、お湯を入れた魔法瓶、うがい薬、レインコートそしてパラシュートまで持ち歩いていた。しかしもう一度人生をやり直せるなら、今度は身軽な旅をしよう。持ち物が少なければ少ないほど苦も少ない。もう一度生きれたら春は早くから裸足になってそれを秋の終わりまで続けたい。回転木馬にもたくさん乗って、朝日ももっと眺めたい…。もう一度生涯をやり直せるなら…。」

 何度読んでも感動と共感で胸がいっぱいになります。このご老人は、まさにご自分の人生を一生懸命に、そして大真面目に生きてきた人なのですね。すべきことをして清く懸命に生きてはきたけれど、何だかしんどかったし、あまり面白い人生ではなかった。もっとリラックスをして、もっとクレイジーになって、野生の自分に戻って、面白く人生を生きてくるべきだった…と回顧していらっしゃるのですね。“…この次はもっとたくさんの過ちを犯したい。今度はもっとクレイジーになろう…”  彼の次の人生は何だか面白くなりそうですね!

 私の人生はこのご老人に比べればかなり大雑把ではありますが、それでもこの一文に惹かれ共感するのは、人生を生きる上で自身に制限をかけるような固定観念がまだまだ沢山あって、それらが自分を無意識に縛っているために、心躍る冒険を前に挑戦を辞め頓挫してしまうことも多々あるわけです。このご老人のつぶやきのように、もっとリラックスして、固定観念を外して、やりたいことに臆せず挑戦したいものと顕在意識では願いつつも…

 さて、リラックスというのは、状態として見れば、全身の筋肉が緩み呼吸が深く緩やかになった感じとも言えるでしょう。例えば、私は水のたたずまいや水が流れる音が大好きで、それらに触れる為に時々自然の中に出掛けます。すると不思議に身も心も緊張が解けていくようで気持ちがいきいきとしてきて、リラックスとはこんな状態のことをいうのではないか…と感じます。

 以下は、無印商品「暮らしの食品研究所」のWEB情報からです。

「私たちが“自然”を心地よく感じるのは、自然界の至るところに含まれる“ゆらぎ”に関係しているらしい。生物もすべての生きものも、じっと静止しているものはなく目には見えないが、すべてのものは細やかに振動を続けていると言う。小川のせせらぎ、そよ風、木漏れ日、小鳥のさえずり…しかも私たちの身体さえも漏れなく振動しているという。それ故に、我々が身体のリズムと同性質を持った自然のゆらぎを快適に感じるのではないか…」と。
この“ゆらぎ”の概念自体は物理学の分野でも言われていることのようです。

 ボストン交響楽団の音楽監督として長く在籍していた指揮者の小澤征爾氏(1935~2024)の体験です。小澤氏の師の一人であった世界的大指揮者のシャルル・ミュンシュは、小澤氏にたえず「力を抜いて!頭の力も身体の力も手の力もみんな抜け!ふわ~した気持ちで指揮棒を振るんだ。そうすればおのずから音楽の方から鳴りだす!」と、再三言われたと言います。心でしっかりと曲を感じてさえいれば手は自然に動くものだというわけです。私は小澤氏のこの体験を聴いたとき、リラックスの真髄に触れた気がしました。

 小澤氏の師、ミュンシュ氏が伝えたかったことは、「“われが!われが!”といった我(が)の力を抜いて心を和らかく持って、リラックス状態を維持するのだ。すると音楽の方から自然に鳴りだす…。つまり、自我の“力み”(りきみ)を外して、自然の“ゆらぎ”を信頼して身を任せてリラックス状態になれば、人間に本来備わっているエネルギーや力が自然に訪れるんだ…それを受けとりなさい」…ということではないかと私なりに感じたことでした。

 確かに「好奇心」は素敵だし大切だと思います。しかし周りに気を取られ過ぎると自分を見失ってしまいます。リラックスして自分と対話したり、自分と付き合う時間を充分に持ってみたら、ミュンシュ氏が言うように、自分の中に自分にとって必要な答えは常にある…ということが解ってくるような気がします。自分自身を信頼し、リラックスして、しなやかに生きる。これは今の私の、生きる上で大切にしたいテーマでもあります。

Love Yourself First
まず自分を愛して

*次回のコラムは2025年1月20日前後の予定です。