Column 2014 No.8
期待しないであきらめないで
- 日 木 流 奈 -
今日は日木流奈君のことを書いてみたいと思います。幼い頃から成熟した知恵者であった彼を“流奈(るな)君”とたやすく呼ぶのは少し戸惑いはあるのですが(笑)・・・・。
流奈君は極少未熟児で産まれ、生後2週間で三度もの大手術を受けるほどの障害を持って生まれました。手術や薬物投与の結果、脳萎縮という後遺症が残り、それ以後も何度もの危機がありましたが、入退院を繰り返しながらも命をつなぎ、現在彼は24~25歳の青年です。彼の両親は障害を持って産まれた流奈君をそのままに受け入れ、ひとときも彼について諦めなかったといいます。脳萎縮という後遺症が残った彼が、これから生きていくために、“親として何が出来るか”だけを考えたのです。
そして流奈君が2歳のときグレン・ドーマン博士のドーマン法に出会い、そのプログラムを開始します。彼は重度の障害を持っていますので、手足は勿論自力では動けず、言葉も口頭では全く伝えることは出来ません。しかしドーマン法の運動プログラムや知的プログラムを通して彼の無限の能力が大きく開花していきます。勿論母親の介助は要りますが、文字盤を指すことで、流奈君は、水を得た魚のように自分の気持ちや意志を溢れるように伝え始めたのです! それは人の心を揺さぶるような愛と智慧に溢れた深いメッセージでした。
彼は言っています。「・・・・医学の進歩により、私の脳の回路がある日突然繋がって、歩けたりしゃべれたりするかもしれません。私はまだ諦めてはいないのです・・・・」と。 決して諦めないという精神はご両親から流奈君にも引き継がれていったようです。
一方、私たちは自分に対してもわが子に対しても、目標への期待はとても高くて、少しでもそれから逸れてしまうと、簡単に諦めモードに入ってしまいやすいということはないでしょうか。
親業の勉強に来られたお母さん方が時々こんなことを言われます。「私は子育てに失敗しました」と。お母さんがそれを子どもがいるところで言ったら「おれって失敗作なわけ?!」と切り返してきたそうです。“失敗”だなんて、子どもからしたらとてもショックな発言ですよね・・・・。
子どもの人生はまだまだこれからなのに、もう決め付けているのですか…と尋ねましたが、実は諦めていないからこの講座を選択されて来られているんですよね。そこから、これまでの思いの姿勢を正して、学習した新しいコミュニケーションをとっていくことで、ご自分を取り戻され、子どもとの関係も取り戻して、親子双方が自立への道を歩み始められるのです。
“人生、諦めさえしなければ何とかなる!”
これは私の持論でもあります。
流奈君はこんなことを言っています。
「・・・・不安や恐れは思いと反対の結果を生み出します。希望を持ち、大丈夫、大丈夫といい続けましょう。自分の出来ること、やるべきことをしさえすれば必ず未来は開けます。諦めないでください・・・・」と。
流奈君の著書を一冊だけご紹介しておきます
「自分を完全肯定できますか」(講談社)
*次回のコラムは6月10日前後の予定です