2018年11月20日火曜日

読書の時間を大切にしなさい。一冊の本との出逢いがあなたの生き方を変えることがあります

読書の時間を大切にしなさい。一冊の本との出逢いが
あなたの生き方を変えることがあります
ジョセフ・マーフィー
Column 2018 No.66

 「読書の秋」…とよく言われます。秋は、自然が豊かで気温も爽やか…何となく落ち着いて本の世界に入れる気分があるからでしょうか。

 読書というと、私自身、子ども時代から“本の虫”と言われるくらい本が大好きで、絵本から小説、エッセイ、歴史もの‥何でもそこにあるものを手当たり次第に読んでいました。いわゆる乱読です。通学の乗り物に乗っても、すぐに読みかけの本を開いて読んでいたものです。それを弟が「お姉さんはいつ見ても本に、しがみつくようにして読んでいた…。少しは外の景色でも見ればいいのに…と思っていたよ」と言われるくらいでした。

 学生時代、クラスの教授から興味深い宿題が提出されました。女性の生き方を描いた小説を、5冊以上読んで感じたことを、400文字の原稿用紙100枚以上のレポートに纏めて提出すること。今回はそれで成績を付ける…と。周りのクラスメートは「無理よ~!」…という反応でしたが、私はとてもわくわくとしたのを覚えています。山本有三の「女の一生」モーパッサンの「女の一生」円地文子の「女坂」…等々を選んですぐに読破し、レポートに取り掛かりました。

 レポートに纏めた学生時代のその経験を通して、私は、女性の性(さが)…そこから見えてくる、ひとりの人間としてのあり方を、自分なりに明確にし、腑に落ち、それが今も、生き生きと私の中で生きて働いているのを感じます。冒頭のフレーズのように、それらの本との出逢いが、今も私の生き方感じ方にとても大きな影響を与えているのを感じるのです。

書物の新しいページを1頁1頁読むごとに、私は、
より豊かに、より強く、より高くなっていく
チエーホフ

 賢人も、そこに至るまでには、書籍を読むことで自分を高め、深めていったんだな…ということが伝わってきます。確かに書籍は、その著者が経験したこと、苦労して得たもの、身に付けてきたことを、ひたすら精魂を傾けて書いています。その書物に触れることを通して、私たちは他者の人生を味わい、他者の人生を間接的に経験することができるのです。

 その結果、私たちも自分の視野を広げ、世界観を広げ、精神性を高め、自分自身を深めてきたのだと思います。もし書物を通して学べなかったとしたら、私たちは、自分ひとりの人生しか経験できないし、自分ひとりの人生しか味わうことができなかったでしょう。その結果、自分の固定観念に縛られて、頑固に不自由に生きることになったかもしれません。

 しかし、私の祖父は、私の本好きを心配していたのか、「亮子、よい本を読むことはとても大切だが、でも読み過ぎては駄目だよ…」と時々言っていました。私は自分が、書物を通して成長している自分を感じていたし、祖父が毎日書物を読んでいる姿も見ていたので、祖父の言っていることがその時は、よく理解できませんでした。読み過ぎると、目が悪くなるから…かなぁ…くらいの理解でした。

 しかしもう少し年齢を重ねたとき、祖父の言っている意味が、はっきりと分かる日がきたのです。祖父が時折言っていた言葉に「人生の答えは外にはない。外に答えを求めすぎると自分が確立できない。答えは自分の中から来るということを信頼しなさい」…と。また「人の話を聴き過ぎてはいけない」ということも時折言っていました。読書をし過ぎたり、他者の価値観を取り過ぎて自分の軸がぶれてしまうことの危険性を警告していたのだということが解ったのです。

 最近出逢ったアインシュタインのフレーズに

本をたくさん読み過ぎて、自分自身の脳を使っていない人間は、
怠惰な思考習慣に陥る

 というのがありました。それぞれの著者が述べている価値観を、安易に取り続けると、自分自身の人生に対する感性が鈍くなる…ということを言っているのでしょう。祖父の言葉が意味している答えの一端を、垣間見たような気がしました。

ドン・キホーテは読書によって紳士になった。そして
読んだ内容を信じた為に狂人となった
バーナード・ショー

 ドン・キホーテの物語は面白くて何度か読みました。バーナード・ショーのフレーズに思わず笑ってしまいましたが、祖父の言わんとすることにも繋がるんだなあ…と、とても興味深く思ったことでした。祖父が私に伝えたいことが理解でき始めてからは、私は自分の軸をしっかり感じながら、書物を心から楽しみ、内容をしっかり咀嚼して、捨てるべきものは捨て、取るべきものは取っていく。そんな“感性”が、少しずつ育ってきたような気がします。

書物そのものが君に幸福をもたらすわけではない。ただ
書物は、君が、君自身の中に帰るのを助けてくれる
ヘルマン・ヘッセ

 人によっては色々な解釈があると思いますが、このヘッセのフレーズは、今の私の心にとてもしっくりときました。祖父が私に言わんとしていたことと統合したのです。書物はただ楽しむためだけに読むのではなく、また物知りになる為に読むのではない。書物は、私の魂の成長に、とても助けになってくれる存在…つまり私が、本当の私を見つけるための、本当の私に辿り着くためのひとつのツールとして在るもの…。

 これからも私の感性で、私にとっての良書を選び、「読書の秋」をわくわくと楽しみたい…そう思っている昨今です。

*次回のコラムは12月20日前後の予定です。

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