2014年7月29日火曜日

コミュニケーションの基本「表現力」と「共感力」(その2)  ~“表現力”を身につけて実感のある人生を!~

Column 2014 No.11

 前回は、表現力(発信)と共感力(受信)の“双方コミュニケーション”を使っての「対話力」の大切さを書きました。自己表現と傾聴(共感)についてもう少し詳しく知りたいと言う声がありましたので、これから2回にわたって今回は「自己表現」次回は「傾聴(共感)」について親業が大切にしている心を、さわりだけになるとは思いますがお伝えします。

 日本人は自己表現が苦手な国民だとよく言われます。「和をもって尊しと為す」という精神を大切にしてきた日本の風土には、自己表現はあまり重要視されない歴史があったからでしょうか。

 しかし相手の気持ちを大切にすることは勿論、自分の気持ちをも大切にできたとき、これこそが「和の精神」であると私自身は理解しています。

 日本の子どもたちが海外でホームステイをしたときの様子を耳にしたことがあります。例えばステイ先の友達から「君、何の曲が聴きたいかい?」と聞かれると咄嗟に「何でもいいよ」と答える子が多いと聞きました。食卓に並べてあるドレッシングの中から自分の好きなものが「これが好きです」と選べない子も多いようです。しかしこれは決して子どものせいではなく私たち親が、子どもに考えさせ選択させる機会を奪ってきたことが原因でしょう。

 親業では「自分を感じてください」と絶えず投げかけます。いつも自分の本当の気持ちに気付いていないと、自己表現はとても難しいのです。自己表現できる子どもに育てようとするなら、その子が体験し、感じるチャンスを奪ってはならないし、その子が選択するチャンスをできるだけ沢山与えなくてはならないでしょう。

 自分の気持ちが掴めると、はじめて
 「私は今こう考えています」「私は今とても嬉しいです」「私は困っています」というふうに自分の気持ちを内外一致で表現できるのです。すると相手にあなたの気持ちがまっすぐに伝わるので、本当のあなたのことが解ってもらえるのです。そして自分を語るから、何しろあなた自身が生きている実感がつかめるのです。

 自分の気持ちを掴めない人はどうしても人称が第三者になりやすい。「うちの主人がこう申しています」「Aさんはこんな考えを持っているみたい」このように他の人称で話す人は、多く人間関係のトラブルを引き起こし、孤立する結果になりやすいのです。自分以外の人の気持ちは決して代弁してはならないのです。できるのは自分の内面を内外一致で表現することだけです。

 自分の本当の気持ちに気付いて、それを表現してみてください。自己表現ですから、人称はいつも「わたしは」です。誰でも生きることに息詰まってしまうと、多くは苦悩や怒り、嫉妬などネガティブな感情に圧倒されてしまいます。しかしどんなにみっともないと思う感情であっても、感情は嘘偽りのない真実なのです。だから自分の一部分として抱きかかえてあげるだけの自分への愛、自分への優しさがとても大切なのです。弱さのまんまで、怒り狂ったまんまで正直に自分を語ってみましょう。

   「わたしは凄く傷付いています」
   「わたしはいま怒っています」
   「わたしはほんとうに弱い人間なんです」

カウンセリングに来ていたある青年が以前こんな気付きを話してくれました「・・・・弱さを見せたら、人は自分から立ち去るのではないかと思っていました。でも本当は弱さを出せば出すほど、人は近づいてくれるんだとわかりました・・・・」と。

 私たちは人と親密になりたいと思いながら、本当の自分を語らないために相手との壁が埋まらず、いつも寂しいのです。孤独なのです。何十年も夫婦をやりながら 今でも他人のままという方々を沢山見て来ました。

 でも受講生のTさんからはこんなお便りを頂きました。

 「・・・ある日わたし宛にこんな暑中見舞いの葉書が届きました。
 “暑い日が続きますがいかがお過ごしでしょうか。汗だくになりながらも頑張っておられる姿をいつもまじかに拝見し、陰ながら大変感謝しております。なかなか口に出しては言えないので書面にてお礼を言いたいと思います。前向きな人生と刺激をいつもありがとう!・・・”
 でも差出人の名前がありません。15分位悩みましたが、なんと夫の字だったのです。手作りの葉書に富士山の絵が描いてありました。感動で涙が溢れてしまいました。」

 ご主人の自己表現が、奥様にこんなに感動を与えたのです!

*次回のコラムは8月20日前後の予定です。

2014年7月9日水曜日

コミュニケーションの基本は、発信と受信。 それは「表現力」と「共感力」です

Column 2014 No.10

 親業では 自分と相手との間に心地よい人間関係を組んでいくための効果的なコミュニケーションとは何かを学び、練習をして身につけていきます。

 コミュニケーションの基本は 表現力つまり“自己表現”と、相手の話を共感をもって聞く“傾聴”の、「発信と受信」の双方向コミュニケーションです。それを図にしたものが下記のとおりです。
コミュニケーションは大変難しいと言われますが、事実はとてもシンプルなのです。表現力!と共感力!この二つの力を手に入れたら、あなたはコミュニケーションのベテランです。

 それは表現力(わたし大切)と共感力(相手大切)の双方向コミュニケーションであり、それぞれの個人の中でそれが心地よいバランスを持ったときに、双方に、はじめて平和な「対話」の場が生まれます。

 さて、わたし達に身近な国々、アラブ諸国とその周辺ではいくらか民主化が進んできたとはいえ、民族・宗教・領土・資源をめぐって今もなお絶えることのない紛争、小競り合いが続いています。いくら権力や武力で制圧をしても、人の心まで制することは決してできない。人としての尊厳性を無視して、真の解決には決して向かえないということでしょう。

 いま問われる急務は、どんなに時間はかかっても、人と人とが、政党と政党が、民族と民族が、国家と国家が「対話」によってどう歩み寄っていけるか!ではないでしょうか。もっとも対話ですべてが簡単に片づくとは決して思いませんし、並大抵ではありません。それにお互いの過去の過ちや痛みを、許しあえる日が来なければとても難しいでしょう。しかしそれさえも対話なくしては不可能でしょう。

 まず個人レベルから「対話」の力量を養っていくことは、いま私たちに出来る世界への貢献の大きな第一歩ではないでしょうか。もし我々人類一人一人が双方向コミュニケーションをベースにした「対話力」を子ども時代からある程度体得していたら、世界の混乱はもう少し早く治まっていたのではないかと・・・・。

 受講者の方の、ある事例をご紹介します。

 夫が今夜も呑みに出かけるという。今週はもう3回め!私はとても受け入れられない。それで夫に自分の気持ちを正直に表現してみました。 

「あなた、今日は3回めなの。年末になると生活費が嵩むし、私とても不安なの。」 ・・・・・・自己表現
「俺が呑みに行くというとお前はすぐ嫌みをいうね」
「あなたは私から嫌みを言われてるようで、気分悪いのね」・・・・・・共感
「そうだよ!」
「でもね。嫌みで言ったのではないのよ。新年を迎えるのにお金が足りなくなるのではないかと不安なのよ」・・・・・・・自己表現
「そうか、不安なのかあ」・・・・・・・共感
「そう!新しい年を気持ちよく迎えたいのよ」・・・・・・自己表現
「わかった!今夜はやめとくよ。連れが待っているわけではないしな」
「わあ、嬉しい!有難う!コーヒー入れるわね。」・・・・・・自己表現

気付き:
いつもお金のことを言うと、「うるさい!」「しっつこい!」という夫がはじめて「わかった!」と言ってくれたのには驚きました。自己表現って伝わるんですね。

 相手について価値判断したり責めることをしないで、自分の思いや痛みを正直に表現していく。そして相手の言い分(反発)に対しては、反発で返すのではなく、一度きちんとそのままを受け取って共感で返してみる。表現力と共感力がみごとに発揮され、穏やかな「対話」が成立しています。そしてお互いに納得の解決策にたどりついています。

言い過ぎもせず 言い残しもなく 自分の心を
きちんと表現できたら その日は幸せな一日
                 - サインズ -

*次回のコラムは7月30日前後の予定です。