2023年1月20日金曜日

くさらない おごらない 屈しない

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くさらない おごらない 屈しない
村上 和雄
Column 2022 No.116

 村上氏は分子生物学者であり、高血圧を引き起こす原因となる「ヒト・レニン」の遺伝子解読に成功。遺伝子を研究していけばいくほど人間智では解決できない世界があるとし、それをサムシング・グレイトと想定したことで知られている。

 私たちは仕事で挫折したり、誰かに先を越されたり、人間関係でぎくしゃくして自分の非を認めざるを得ない事態に陥ったとき…などに、“くさらない”でいられる人はまずいないでしょう。逆に、他の追随を許さないほどに仕事に成功したり、人々に尊敬され崇められる環境にいるとき“おごらない”でいられる人も、そう多くはいないのではないでしょうか。

勝って驕(おご)らず 負けてくさるな
作者不詳

 このフレーズや冒頭の村上氏のフレーズに私たちが心惹かれるのは、出来そうで出来ない内面のこの葛藤に実はうんざりしており、何とか乗り越えたいと感じているだけに、私たちの魂に深く響くのでしょう。

 しかし、感情にいい・悪いはありません。ものごとが思うように運ばないで、気持ちがくさったり、逆にうまく運んで有頂天になったり、つまり“落ち込む”ことも“驕る”つまり威張る気持ちも、正直に自分を生きていると、必ず感じる人間の自然感情であり、実は貴重な感情体験なのです。

 自分自身の中のくさってしまう気持ちや驕ってしまう気持ちを、ただ感じて味わっていると、やがてそれらの感情が俯瞰出来るようになるものです。するとそれらが、実は居心地の悪いものであることに気づいたり、驕っていた感情が自分にとって本当の歓びではなかったということにも、人は自然に気付いていきます。そしてそれらの気づきが智慧となって、私たちが次に選択する行動に必ず生きていくのです。実はそのプロセスが、自己実現に向かう次のステージに上がっていくために、とても大切な行程なのです。

 「屈しない」というのは意志の力です。くさることがあるかもしれない。おごることがあるかもしれない。しかし、ただその感情に気づいていること。そして本来自分の中にある“諦めない”“めげない”意志の力を思い出して、それを使うことで、私たちは必ず何かを掴んでいくのです。

生きる上で最も偉大な栄光は転ばないことにあるのではない。
転ぶたびに起き上がり続けることである
ネルソン・マンデラ

結果が出ないとき、どういう自分でいられるか。
決して諦めない姿勢が何かを生み出すきっかけになる
イチロー

 私自身も人生に何度か挫折がありました。今思い出しても胸が詰まるような体験です。しかしやはり私は立ち上がることを選択しました。その結果、イチロー氏が言うように、その痛みを伴なった体験の中から、私にとって必要な答えが閃きのようにやってきたのを記憶しています。そしてその時に感じたことは、“諦めない!”という意志の力は、本来誰の中にもあって、諦めないと決意したとき、それはその人の中で、次のステップに進むための大きなエネルギーを発揮してくれるものなんだ‥ということを実感したのです。

努力して結果が出ると自信になる
努力せず結果が出ると驕り(おごり)になる
努力せず結果が出ないと後悔が残る
努力して結果が出ないとしても、経験が残る
作者不詳 

 “自信”も“驕り”も“後悔”もすべて人生における貴重な体験です。例え思うような結果が出ないにしても、必ず経験が残るのですから…。その経験から来る気づきこそが、私たちに叡知を授け、成長させてくれる宝なのです。経験・体験と共に来る感情を、恐れず味わい体験していく。味わうということは感情にのめり込むことではありません。格闘することでもありません。感じて気付いたら、出来ればあとは、あなたなりのやり方で感情を手放していく…これは大切なあり方です。

 その結果“くさる”ことも“驕る”ことも、その人にとってはたいした問題ではなくなり、次にやって来る経験・体験を果敢に迎え入れることができるようになります。このこだわりを超えた積極性こそが自己実現に向かう、まさに王道なのではないでしょうか。

私が無一文になったとき、失ったものは財産だけではないか。
そのぶんだけ、経験から血や肉となって身についた
安藤 百福

経験を賢く生かせるなら 無駄な時間は一切ない
オーギュスト・ロダン

*次回のコラムは2023年2月20日前後の予定です。

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