2019年10月20日日曜日

遺伝子のスイッチがONになったら、可能性が花開く

遺伝子のスイッチがONになったら、可能性が花開く
村上 和雄
Column 2019 No.77

東井義雄「心のスイッチ」

人間の目は 不思議な目
見ようという気もちがなかったら 見ていても見えない

人間の耳は 不思議な耳
聞こうという心がなかったら 聞いていても聞こえない

頭もそうだ
はじめからよい頭 悪い頭の区別があるのではないようだ
「よし!やるぞ!」と 心のスイッチが入ると
頭も すばらしい働きを しはじめる

心のスイッチが 人間を
つまらなくもし すばらしくもしていく
電灯のスイッチが 家に中を
明るくもし 暗くもするように
出典:東井義雄著「自分を育てるのは自分」(致知出版)  

 心に“スイッチ”が入ったとき、人は本気で変わる…と東井氏は言います。村上氏は“遺伝子のスイッチ”がオンになったとき、可能性は見事に花開く…と述べています。おそらく同じことを伝えているのだと思います。私たちの心や、遺伝子に、スイッチが入る動機には、色々あると思います。ある人は、高校の先生のあのひとことで…。名作を読んでいて…。映画を観て…。美しい大自然の中で…。そこには間違いなく、その人の心を打つ深い深い感動があったはずです。

感動は、心の爆発であり、大地震であり、それは人の心の扉を開く
椋 鳩十

 椋(むく)氏が言うように、深い感動があったからこそ、その人の心に爆発が起こり、スイッチが入り、そこで心機一転! 生きる力に満ち満ちて、自分の進むべき道が、明確に見えてくるのでしょう。

 コラムNo52でとりあげた工藤房美氏は癌の末期で余命1ヶ月と宣告され、絶望の淵にあったとき、村上氏の本に出逢いました。「そうか!DNAのうち、まだ眠っているDNAが95%もあるんだ!その眠っているDNAが目を覚ましてオンになったら私だって回復できるはず!」それは、絶望状態にあった彼女の心に爆発が起こりスイッチが入った瞬間でした。そして奇跡が起こり10ヶ月後、癌はすっかり消え、彼女は生還したのです。

 コラムNo26でとりあげた野上文代氏は、長年の不妊治療の甲斐あって一度に3人の子どもを授かります。ところがMRI検査の結果、3人の子どものうち2人の子どもが、脳に異常のある脳性マヒと診断。野上氏は育児のストレスと、続く不眠で深刻な鬱状態に陥ります。子供を道連れに、死ぬことばかり毎日考えていたと言います。

 ある日、障がいのある我が子が、酸素ボンベを付けたまま、自分の腕の中で、懸命に母乳を吸っている! 必死で生きようとしている! その姿に野上氏は大きな衝撃を受けたのです。音を立てて何かが弾けた!この時、野上氏の心にスイッチが入った瞬間でした。この子たちのためなら何でもするぞ!その日を機に、絶望の淵から雄々しく立ち上がったのです。やがて自分の体験を生かして、障がい児の為の施設を立ち上げ、現在も社会に大きく貢献しています。

 私自身も体験しました。青年時代、重篤な鬱から立ち上がったときの経験を、今もはっきり覚えています。それは知人からの一通の葉書でした。「…人って、そんなに上等でしょうか。笑ったり、怒ったり、嫉妬したり、そんな、みっともない自分のまんまで、ああ今日も一日生きさせてもらったぞ、と有難く確認しながら、一日一日を、ただそうやって、自分は生きています…」 全く押しつけがましさのないその一枚の葉書は、私の心を揺さぶるように爆発を起こしたのです。“そうだ!もう自分を苛める(いじめる)ことは辞めよう。私のまんまで生きていいのだ!”…私の心がスイッチ・オンした瞬間でした。その日を機に、私は、数か月の挫折からみごとに立ち上がったのです。

 確かに感動は“心に爆発”を起こします! またそれが東井氏や村上氏のいう“スイッチ・オン”の瞬間でもあるのですね。まさに眠っていた全細胞が目を覚まし、身体中にエナルギーが張り巡らされる…という感じです。特に挫折感が大きければ大きいほど、それは大きくやって来るような気がします。工藤房美氏にやってきたスイッチ・オンも、野上文代氏にやってきたスイッチ・オンも、深い深い挫折感の中でした。

 私は、そのような辛い挫折感は、再び味わいたいとは思いません。しかし、心を爆発させるような「感動」は、今も忘れていないし、これからも求め続けたいと思っています。椋(むく)氏が言うように、感動こそが、一人ひとりの中に眠っている無限への扉を開いてくれるエネルギーなんだ…と気付いたからです。これからも、魂が思い切りわくわくすることを、心を込めて体験し、しっかり遊んで、そして感動して生きていこう…と思っています。

歳をとったから遊ばなくなるのではない。
遊ばなくなったから歳をとるのだ
バーナード・ショー

*次回のコラムは11月20日前後の予定です。

2019年の講座予定を公開中です☆
 2019年 講座開講スケジュール