2014年12月21日日曜日

感情抑圧は諸悪の原因です ~ 自分の本当の気持ちに気付いてあげることは愛に溢れる行為です ~

Column 2014 No.18

 ずっと以前のことですが、ある集いに参加した折、人間の感情についての話題になったとき、ある女性が「私はこれまでの人生で一度も怒ったことがありません・・・・」といった意味合いのことを言われたので、私はとても驚いて咄嗟に「Aさん、病気をなさいませんか」とつい聞いてしまいました。その方は即座に「はい、突然倒れたりして時々救急車で運ばれることがあります」と答えられ、そうだろうなあ・・・・と合点したことでした。

 人間をやっている以上、怒りを感じない腹を立てない人間はまずいないのです。怒りを抑え、腹立ちを抑える人間がいるだけです。そして感情の中でも特に強い感情である“怒り”とか“恐怖心”の感情を抑え続けてしまうと、必ずといっていいくらい色々な障害を生みます。これは心理学者、精神科医も証明しているところです。

 ある外国の精神科医による興味深いレポートを読んだことがあります。

 大地震、ブレーキが利かなくなったバス、ハイジャックされた飛行機・・・・など異常事態が発生したとき、そのトラブルにたまたま遭遇した人々(勿論、遭遇はしたけれど一命を取り留めた人々を対象に)心理的な追跡調査した結果の報告です。トラブルに遭遇した人々は一応に、心理的な大きなダメージを受けるので、その心理的外傷を癒す為に精神科医がそのフォローに当たります。その癒しのプロセスの興味深い臨床結果を報告したものでした。

 それによると、一番厄介だったのは、衝撃的なトラブルに遭ったにも拘らず、そのトラブルに平然と対処した人々のグループだったと報告しています。一方トラブルに遭遇したとき、取り乱したり泣き喚いたりした人々のグループは、興味深い結果ですが、最も立ち直りが早かった。それは恐怖の感情をその場で正直に感情表出したことが益となった。一方トラブルに冷静に対処し、下乗後も堂々とインタビューに応じたような人々は、数日後或いは数週間後に不眠を訴えたり、夜驚や徘徊行動などの異常な心理的反応を多く示したといいます。しかもアフターケアの長さは、トラブル後、不眠・夜驚・徘徊・・・等に伴う感情表出に至るまでの期間の長さに比例したと報告しています。

 この臨床結果からも、人は感情表出によって精神(心)の状態のバランスをとっているということがよく理解できます。自分の感情に正直に対峙せず、感じない振りをしたりごまかしたりすると、感情は昇華されないまま抑圧され、結果的にその人の身体的なものに、或いは生き方に微妙に悪影響を及ぼしていくのです。

 尤も人間は実に絶妙にできていて、抑圧したネガテイブな感情を無意識ですがさまざまな形でバランスをとっていきます。健康上のトラブルで抑圧感情を表出していくことは勿論ですが、不機嫌・短気・逆上・・・など別の感情でバランスをとったり、癇癪・人を責める・DV・物に当たる・・・のように攻撃的傾向で表出している人もあります。過食・拒食・アルコール依存・薬物依存・恋愛依存・・・等々の依存的傾向でバランスをとる人もあります。またかげ口・悪口・噂話など正当化でのバランスもあります。

 もっともこれらの多くはカウンセリングの場面で接したケースで、生育歴に端を発している場合が多く、皆“いい人”をやってきた人達です。耐えて我慢して、他者の人生のために自分の人生を犠牲にしてきた人達です。怒りの感情も不安の感情も感じないふりをしないとやってこれなかった。程度の差はありますが、幼い頃から喜怒哀楽の感情を抑えることが日常的だったのです。

 しかしカウンセリングの場で、自分を語ることを通して、ご本人が自分の生い立ちを理解し、そして許し、徐々に自分の今の感情にきちんと対峙できるようになるに従って、健康になっていかれるケースを沢山見てきました。

 怒りの感情も恐怖の感情も、正当な感情です。親業ではネガテイブな感情もポジテイブな感情も同じ位置で大切に考えています。本当に怖いとき、怖がる自分を許し「怖い!」という感情を受けとめてあげるから情緒が安定するのです。また不安や恐怖心があるから、あなたは危険な場所や猛獣に近づかないのです。実はネガテイブな感情はあなたを守ってくれているのです。

 ただ、あなたを圧倒するほどの不安・恐怖は減らしてあげないと、生きづらくなりますよね。そこで親業では人間関係を壊さない形で怒りの感情を表現する方法を学びます(コラムNo11No12参照)しっかり感じてあげて気付いてあげて、表現したいと思うことは表現し、心の中で整理できるものは整理して、そしてあとは果敢に手放していく・・・・。感情もエネルギーですから感じてあげたらあとは流してあげる方がいいのです。

 このプロセスこそが真の癒しなのです。感情は生きています!あなたの子どもです。愛して大切にしてあげてください(コラムNo1No9参照)

ネガテイブな感情も優しく見つめてあげて下さい。
それを味わうために人として生まれてきたのだから
日木流奈

“しかし感じることは難しいですよね”と多くの人が言います。「アミ 小さな宇宙人」という本の中で、宇宙人のアミはこう言っています。

頭で何かを考えることを少しやめて、
胸に注意をするようにしてごらん。
そうすれば多分感じることができるよ!


*次回のコラムは1月10日前後の予定です。

2014年12月1日月曜日

チャンスはピンチの顔をして近づいてくる

Column 2014 No.17

チャンスはピンチの顔をして近づいてくる
                                        - 武田双雲 -

 「チャンス」という言葉を聞くと私たちの多くは“よい機会”いわゆる“好機”と捉えて理解していますよね。諺にも「チャンスは前髪をつかめ!」というよく知られたフレーズがあります。「チャンスが来たぞ!と思ったら迷わずに、手を伸ばしてその前髪を掴みなさい!チャンスには後ろ髪がないから見過ごしたら、もはや掴むことはできないよ」という意味であり、要は“好機は逃すな”という警告でもあります。何だかユーモラスですよねえ・・・。

 ところが双雲氏は「・・・自分の前に、壁が立ちはだかって、“もう駄目だ”と思ってしまうとき、僕はチャンスだと思うようにしています・・・」と述べています。

 この種類のチャンスは、私を含めて多くは、掴むどころか恐らく逃げ出したくなるのが本音でしょう(笑)しかし年齢を重ねるに従って、彼が言わんとする「ピンチこそチャンス」の意味が真実だと理解できるのです。
 あのピンチがあったからこそ今の自分があるんだなあ・・・・と。

 しかし、双雲氏の言う“ピンチの顔をしてやってくるできごと”に、“これはチャンス!だ”なんてすぐにはとても思えないし、多くはそのできごとに圧倒されて、焦り・不安・自信喪失のなかで、この環境を制する(逃れる)ためにできることを必死で思い巡らし、戦いもがき、逃げたり隠れたり・・・(笑)

 しかし、その苦しいできごとからどのように逃げても隠れても何の解決にもならず、対峙せざるをえない破目にやがては陥ります。そして自分の中にあった底知れぬ 恐怖心や弱さ、愛の不毛、罪悪感、小賢しさ・・・・に、はからずも出逢うことになるわけです。しかし色々な感情に翻弄されながらも本気で対峙し始めたときから、問題は徐々に解決に向かい始め、さまざまな感情も徐々に“諦念”の域に達し、自分をあるがままに許していくプロセスに気付くことで、再び小康状態が訪れる・・・。

 ここに至ったときにあらためて、致命的だと思っていたそのできごとが、私のそれからの人生の可能性にギア・シフトしてくれたかけがえのないチャンスだったんだなあ・・・とやっと確信できる。苦しみもだえ、自分の中の弱さや醜さに出逢い、その痛々しい体験を通して自分の中に新しい視点が生まれてくる! 言葉にするにはとても難しいのですが、魂の皮がひとつ“くるっ”と剥けたような感覚・・・・。自分への視点が変わり、同時に他者への視点も変わる・・・・。ひとことで言えば愛の感覚がちょっぴり深まったような・・・。

 そうかといってやはりピンチは怖いし、できることなら引き寄せたくはないけれど、しかし「人生は即ち学び」だとしたら、自分の成長にとって必要なら、無意識を含めて私の魂はピンチを引き寄せてまでも、学ぼうと覚悟をしているのかもしれない・・・・。
 ある賢者のことばが、今の私にはしみじみと理解できます

たましいを脅かすようなできごとは、何ひとつあなたの人生には
起こりません。ほんとうに、人生のすべての体験は目覚めをうな
がしてくれます。たましいの成長に役立たないものは
何ひとつありません

最近受講者のAさんから頂いた手紙の一節をご紹介します。彼女の上に、ある大変苦しい出来事が起こり、もがき戦って・・・・そして得られた彼女の今の心境です。「・・・・人生には一点の無駄もないんですね。あのときの私の選択を、あとであれは間違っていた・・・と言ったり思ったりしたけれど、まさに適切な最高の選択だったのだと、今は思うのです。他者を傷つけたり、他者に傷つけられたことを含めて・・・・。私はそこから学んだのだ。気付いたのだ! だから罪悪感は一切要らない! 罪悪感を持っていると前に進むことができませんものね・・・・。」

 この方も、ピンチをチャンスに大きく生かした人です。こんなに深い気付きは、多分幸せの中からは生まれてこなかったでしょう。逃げず隠れず、ピンチにきちんと対峙して、戦ってもがいたあかつきに得られた深い気付きです!この気付きは彼女のこれからの人生を大きく変容させていくことでしょう。

 彼女は、自分を大切に、自分に正直に人生を楽しんで生きている人なので、こんなピンチからも逃げず、まっすぐに対峙でき、そしてそこから学べる人なのです。楽しめる時には人生思い切り楽しんで、エネルギーを絶えず蓄えておくことは、自分への大きな愛だと思います。私も学ばせていただきました。


*次回のコラムは12月20日前後の予定です。