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Column 2026 No.156
我が子を一人ひとり区別なく公平に、対等にみて、対処していく…私たち親はその大切さには気づいていますし、そのように接しているつもりでもいます。
これまでに幾つか考えさせられる場面がありました。
私がまだ子育て真っ最中の若いママさん時代に、ある老婦人Fさんという年齢は違えども分かり合えるお友達がいました。Fさんには中学生の二人の同居のお孫さんがありました。ある日、Fさんが唐突にこんなエピソードを話しはじめたのです。
『 嫁の、二人の孫への扱いを見ていると、明らかに不平等なんですよねえ。それでつい言ったんですよ。“差別しちゃあいけんよ。同じように接してやらんと!
”そういったら嫁は即座に“私は同じように接していますから!”と、むっとした表情で返してきたんですよね。でも違うんです!先日も長男の方の孫が出掛けるときには、嫁の方から千円手渡しながら“これで足りる?”と聞いているんですよね。ところが次男が出掛けに「母さん金(かね)!」と言ったら不機嫌な顔で渋々手渡しながら、しかもこう言うんですよ!“お釣り返しなさいよ!”…と。
どう思われます?これで同じように扱ってると言えますか?一事が万事、私から見ると明らかに扱い方に差別があるんですよね!』
少々興奮した状態で話して下さったのでした。第三者的な立場から見ると、明らかに差別…と解ります。ところが当の親は、その事実に気づかない。同じ親としての立場の私は、何だか身につまされる気がしたのでした。
また別の事例では、あるお母さんがこう言っていました。「ある日、次女の娘が怒って私に言ったのです。“お母さんの目はいつでもお姉ちゃんばっかり見ている!”と。 言われてびっくりしたのですが、親の私が全く気づかなかったのです。しかしよく考えてみると、確かにそうだったかもしれないと思ったのです。この子はとてもしっかりして安心な子なので、ほっておいても大丈夫だったのですね。ところが姉の方は幼い頃から体が弱くて、妹に比べて自立も遅くて、いつも心にかかっていました。心配でしょうがなかったのです。だからこの子が言うように、いつも姉の方ばかり見ていたかもしれません。」と。
子どもによっては幾らか相性はあるにしても、本当のところは、親は一人ひとりの子どもを同じように大切に思い、心から愛しているのです。しかし、子どもの身体や心にトラブルがあったり、まだ幼くて自立に時間がかかっていたりすると、親は気にかかるだけに、問題なく育っている子どもは放っておいて、心配な子どもの方に、無意識に心も目もかけてしまうのです。しかし、子ども側からしたら、みんな親の愛がほしいわけですから、明らかに不公平を感じて、とても寂しい思いをするのです。それは親が想像する以上に、深刻に子どもの心を傷つけ、その傷を大人にまで持ち込むことは多いのです。
親の本当の愛が「愛」として、すべての子どもに伝わるように係わっていくにはどうしたらいいのかを考えてみたいと思います。実は、親の愛情は、視・聴・触覚を通して伝わるように表現することで、子どもに効果的に伝わります。
1 一人ひとりの子どもと目線を合わせる(視覚)
一日1回でいい。ほんの僅かな時間でいいから、
一人ひとりの子どもを心を込めて見つめてあげよう
ロバート・ジョンソン(アメリカの心理学者)
愛情のこもった目線を子どもに合わせていくことは、子どもが親の愛情をまっすぐに受け取ってくれる、効果的な愛情伝達のひとつの方法です。とくに心理的に不安定な子どもは親の目線が今どこに向いているのかをいつも気にしています。大好きな親が自分を見つめてくれないことは、親が想像する以上に子どもにとっては悲しいことなのです。ジョンソンが言うように、一日1回でいい、一人ひとりの子どもと目線をしっかり合わせてあげましょう。「注目されたい」と言う欲求は人間の一生を通しての基本的欲求ですが、それは特に子ども時代に充分に満たされる必要があるのです。
2 愛情の言葉を子どもに伝える(聴覚)
「あなたがお母さんの子どもとして生まれてきてくれてお母さん幸せよ!」
「あなたはお母さんの宝物よ!大好きよ!」
「あなたが生きている!お母さんはそれだけでうれしいの」
親の喜ぶことをしてくれたから“いい子ね”ではなく、その子の存在そのものを愛(いとお)しむ「無条件の愛」を伝えていくことが大切です。それは自分軸を持った自立した子どもを育てていく力があります。一人ひとりの子どもの心に“愛されている”という愛情確認ができると、子どもは大きく自立へと向かいます。
3 子どもの身体に触れることで親密な愛情が伝わります(触覚)
あるお母さんがこんなことをおっしゃっていました。「今でもいい。母に“大好きよ!と言って抱きしめてもらったら、とっても気持ちに整理が出来そうな気がします」と。私たちは皆んな“親の愛情”を求めて生きてきたのですね…。
いわゆるスキンシップと言われるものですが、子どもが思春期に入った頃に、いきなり始めると「やめてよ!」と、多くは抵抗を生むでしょう。自然な握手とか背中をトントン位の接触なら抵抗はないかもしれません。しかし照れている間に子どもはどんどん大きくなって、家を離れる時期が来てしまうかもしれません。小学生くらいならまだ受け入れてくれますから諦めないで伝えて下さい。実は思春期以降でもとても大切なのです。工夫しながら実践してみましょう。
一日中、愛を伝えるチャンスが無かったとか、叱るばかりの一日だったとか…そんな日、子どもが眠る前に、一人ひとりの子どもを抱きしめて(触れる)、目を見つめ(目線を合わせる)、そうしながら「健ちゃん今日もいっぱいいたずらしてお母さん困ったけど、でもね、お母さん健ちゃんのこと大好き。愛しているよ!」(愛の言葉をかける)…のように、一人ひとりの子どもに、視・聴・触覚を同時に使って愛情を伝えることはとても効果的で、子どもとしっかり繋がれますし、真に自立を促し、人と触れることを恐れない大人になります。
最後にもう一つ、大切な愛情伝達方法をお伝えいたします。
4 一人ひとりの子どものサインを見逃さないで声掛けをする
子どもが大きくなっても、お母さんの愛が必要なときは、お母さんの目線を追ったり、様子を伺ったりの態度が見えます。そんなサインに敏感になって「何かある?お母さんお話聴くよ」と声掛けしてみて下さい。子どもは驚いて「ううん。別に…」と反応するかもしれませんが、声をかけてくれた、注目してくれた…それだけでも子どもは納得し安心するのです。子どもにとって無視されることが一番悲しく傷つくことなのですから。
もし子どもが話し始めるようなら、共感しながら聴き切ることに務めてみて下さい。忙しいときには時間指定をしてその時間が来たら必ず聴くことを守ってみて下さい。約束を破ると、子どもからの信頼を大きく失う結果になります。子どもが話すことを、一切茶々を入れず共感をもって聴いて上げることは、想像以上に子どもの心に、安心感と愛情確認を大きく促します。
*次回のコラムは2026年9月20日前後の予定です。