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思いやりのある言葉はずっと心にこだまする
マザー・テレサ
Column 2023 No.122
“例え簡単な言葉であっても思いやりのある言葉はいつまでも心に残るものです”…とマザー・テレサは言います。私達もどこかで、誰かの行動や言葉の中に「思いやり」を感じて、心打たれた経験は一度や二度ではないでしょう。
ちょっとした場面ですが、街中で私が店のウインドウに気を取られて歩いていた為に、若い女性とぶっつかってしまいました。本当は私がお詫びを言うべき場面なのに、相手の女性がすかさず「ごめんなさい!大丈夫でしたか?」と、本当に心からの思いやりとお詫びの言葉をくださったのです。何て心優しい人なんだろうと、マザー・テレサが言うように、その人のお顔と言葉が私の心にいつまでもこだましたものです。
次の一文は20数年も前の記事だと思いますが、ある雑誌の投稿欄の切り抜きを大切に残していました。
私は現在アルバイトをしていますが、
先日職員の方のカップを洗っていて手を滑らせて割ってしまいました。
見るからに高価そうなカップだけに謝罪をするのにとても緊張しました。
ところが何と彼は「そろそろこのカップが飽きてきていたので、
替えようと思っていたところなので、気にしないで下さい」…とのこと。
私は胸を熱くして席に戻りました。神対応に感動しました
この投稿文を拝見した時、私の心まで熱くなりました。壊して戸惑っている人を前に、瞬発的にこうした思いやりのある言葉が出せる人ってこの女性が書いていらっしゃるように、私もまさに“神対応!”を感じたことでした。
心は誰にも見えないが、“心づかい”は見える。
思いは見えないが“思いやり”は誰にも見える
宮澤 章二(詩人1919~2005)
こうした「思いやり」と言う精神は、人の心にもともとあるものなのでしょうか。それとも後天的に育つものなのでしょうか。前回のコラムにも重なりますが、やはり親にどれだけの愛をもって育てられてきたか…がその心を育てることに深く関係していると私は感じています。
可愛がられ抱きしめられて育った子どもは
世界中の愛情を感じ取ることを覚える
ドロシー・ロー・ノルト
このフレーズの通り、母子確立感情(基本的信頼感)が確立すると、その子は周りの世界を信頼し、世界のどこにでも愛を見つけます。つまり基本的信頼感が確立すると、自分を愛するのと同じ感覚で周りの世界・人々を愛することができるのです。自分と他者に分離感がないので、他者の痛みが自分の痛みであり、他者の歓びが自分の歓びと感じられるようになりえるのです。その感覚が、他者の痛みに対して瞬発的に「神対応」のような思いやりとして現わされてくるのではないでしょうか。
大人になった私達は今さら親からの愛情を求めても、多くは叶える事が不可能です。しかし出来ることはあります。そのひとつは自分自身への思いやりを精いっぱい見つけ、示してあげることです。一日一日と老いていく手足に対して、優しい慈しみのまなざしをもって見つめている人はどれだけいるでしょうか。
多くは無意識ですが、私たちは自分自身にはとても厳しい視点で接しています。例えばまわりの誰かが何かに躓いて痛がっていらしたらすぐに駆け寄って、「痛かったでしょう」と優しい言葉が出せるのに、自分がつまずいて転んだりしたものなら「あんたはほんとにつまらんねえ!何処を見とるんね!」痛い上に本当に切なくて精いっぱいの共感と愛がほしい時に、こんな二重パンチをくらわせたりしていないでしょうか。さすが最近はこんな場面は少なくなりましたが、私もよくやっていたものです。
自分自身への最高の思いやりは、今感じている正直な気持ちを決して否定しないで、そのままに丸ごと受け入れてあげることです。「びっくりしたよね」「本当に痛かったよね」…と。そして悲しいときも寂しいときもそのままに「さみしいね」「悲しいね」「しんどいね」…と。また怒りが湧いているときでさえも「本当に腹立つよね」…と言う具合に。その時の自分の感情をそのまま受け入れて、そのままを自分に返していくのです。これは親業の能動的なきき方(共感的対応)を応用した「セルフカウンセリング」で、感情を大きく和らげる力があります。
また自分を励ましてあげる言葉も効果的です。「頑張っているよね!」「やったじゃない!」「上等!上等!」他にもいろいろとあなたなりの表現を考えてみて下さいね。こうした言葉を自分にあげると、思った以上に自信と元気が湧くものです。
自分自身への思いやりに気づいていくと、私たちは息を吹き返してきます。本来の自分に戻っていきます。そしてやがて、自分自身への思いやりは周りの人々への思いやりに繋がり、世界への思いやりとして大きく広がり続けるのです。
さて、人材育成の場面でも「思いやり」の精神がいかに大切かを述べている人は多いと思います。歴史上古い人ですが、日本海軍軍人であった山本五十六(1884~1943)が残した有名な名言があります。
してみせて 言ってきかせて させてみて
ほめてやらねば 人は動かじ
人を育てる心がけとして、まず自分がやって見せる。なぜこれが大切なのかを解かるように説明し理解させ、それから“さあ やってごらん”と促し、出来たときには必ず認める言葉で勇気づける。その結果人の心は育ち、やる気を起こすのだ…と彼は言っているのです。厳しい戦時下にあって、このような民主的な思考を持っていた人があったことに驚きます。彼のこのフレーズは、多くの経営者や指導者の指南役の言葉として、今も知られています。これは子育ての真髄でもあるので、特に子どもの“躾のポイント”としても応用できるということを、私は受講者に伝えてきました。
他人に対する思いやりと共感は
私たちが差し出せる 最大の贈りものだ
タルサン・トルク
*次回のコラムは2023年8月20日前後の予定です。
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先生、
返信削除思いやりの言葉 という題を見て、幼い頃母が外から帰ってくると、「みーちゃん帰ってきたよ」と呼んでくれていたのを思い出しました。母からの愛をいっぱいもらっていたのだと、あらためて幸せを感じました。
返信削除私は厳しい人だと会社でもよく言われています。学級委員なんじゃけえと言われたり、、、。そんな私をなんで厳しくするのか、気になるのか、自分で責めてました。
でも最近、そんなときは、私はそんな行動が赦せないんだなあと、正直な気持ちを感じるようになりました。厳しいわたしもOKと思えば、随分私は私を好きになった気がします。
感情にいい悪いはないというのも大きな学びです。自分の気持ちを丸ごと受け入れることは最高の愛情なんですね。
最近、以前は気になっていた同僚の行動も さほど全く気にならなくなったのは、驚きです。
先日、親業を一緒に受講した友人と一年ぶりの会いました。年に一度のフォローに参加できなかったので、私が内容をフォローするよ、、とお誘いしたのですが、彼女は私の話を能動的に聞いてくれて、とてもここちよい幸せに満ちた時間でした。
まさに最高の贈り物をいただいた気分です。 思いやりはまずは自分を認めてあげることなんですね。親業に出会えて、すてきなお友達もできて どんどん幸せが膨らんでいく気分です。
先生ありがとうございます。
ももこさま
削除コメント有難うございました!この夏体調を崩してしまい寝たり起きたりの生活をしていて、コメントを頂いていたことにも気付かず、先ほど長男の指摘で改めて気づいたわけです。大変な失礼を改めてお詫び致します。お許しくださいね。これに懲りず今後ともどうぞよろしくお願い致します。
母上が外出から帰られたら「み〜ちゃん帰ってきたよ」と、必ずお声をかけて下さっていたのですね。ももこさんはそのお母さまの声がけでホッとなさり、お母さまの愛情をしっかりと感じていらしたのですね。ほのぼのとした気持ちになります。
おっしゃっているように感情に「いい、悪い」はありません。その人にとって感情は本当に正直な気持ちだから。 ただ自分の中で感情の価値判断をして許せないということはあったかも知れませんね。でもその辺りももこさんは無意識を含めてご自分を許せるようになられたのでしょうね。周りの同僚の行動がさほど気にならなくなった…と! それはとても大きいですね!
親業の仲間はやはり自分の気持ちをそのままに聴いて下さいますよね。。それは本当に嬉しいことなので、楽しいひとときだったことが伝わってきますよ。
そうそう、思いやりの気持ちはまず自分自身への思いやりからですね! ももこさんたくさんの気づきを有難うございました。感謝いっぱいです。
大人になって自分は「母子確立感情(基本的信頼感)」が薄いと感じ絶望感を抱きましたが講座を受講すると自分で自分の面倒を見ていくことに繋がり基本的信頼感を確立することができました。そして、私の母があの時代に働きながら子育てをしていた状況が見えてきて母の人となりが見え母からの愛を垣間見ることができるようになりました。
返信削除毎回、自分が思ってるような(期待しているような)言葉を相手からもらうのは難しいけれど・・・自分自身なら自分が一番欲しい言葉を毎回言うことができるので自分で自分を元気にしていくんですよね。
自分が元気なら口で人を動かそうとするのではなくてまずは自分が動くことが出来るんだと思いました。
有り難うございました。
MOONさま
削除MOONさん ももこさんにもお伝えしましたがMOONさんからのコメントにも全く気づかず、改めて本日返信いたします。大変な失礼をお許しくださいね。
さて、ご自分の中の「母子確立感情」が薄いと感じられてがっかりしていたけれど、講座を受講すると、改めて自分に優しく自分を大切にというスタンスに戻り、基本に立ち返られたのですね。すると自然に基本的信頼感が甦ってこられた…と!
同時にご自分の母上に対しても、あの時代に働きながら子育てを頑張っていらした母上の、”人となり” を懐かしく思い出され愛情を再確認されたのですね。
おっしゃっているように、相手からこんな言葉が欲しいと思っても、それは確かに難しい面があるけれど、その期待はやめて、自分が自分に対して本当に欲しいあるいは欲しかった言葉を伝えることは何度でも出来ますよね。
お子たちにも伝えられるし、何しろ自分が自分にかけてあげられる思いやりあふれる言葉、本当に元気が出てきますよね!お互いに自分への思いやりからということを忘れずにいましょうね。有難うございました!