✨ 下村亮子チャンネル『 TRUST YOUR FEELING - あなたの中の答えを信じて 』
Column 2025 No.145
月と太陽の規則正しい運行。太陽系では太陽を中心に8つの惑星がバランスを保って太陽を公転しています。潮の満ち引きや春夏秋冬の自然界のバランス…。また生態系においても、生物同士や生物と環境が互いに関連し合って、絶妙なバランスをもって維持されています。食物連鎖や大気・水・土壌などの物質が生物や環境の間を絶えず循環し、利用されることで生態系は維持されています。生態系はしかし決して固定されているものではなく、常に変化しながらも全体としてのバランスを保っているのです。
バランスは静止ではない。それは継続的な調整だ
アンジェラ・ダックワース
アンジェラ氏のこの指摘は非常に感慨深いものがあります。周りの環境の変化に絶えずさらされながらも、すべての存在は本来のバランスに戻ろうと調整を怠らないのです。
私たちは正反対の事象に位置する多くの極性に囲まれて生きています。例えば、昼と夜 夏と冬 呼気と吸気 左脳と右脳 光と闇 主観と客観 外交的と内向的 長所と短所 リラックスと緊張 ポジテイブとネガテイブ 前進と後退 男性性と女性性 仕事と休息 インプットとアウトプット…等々まだまだ沢山の極性が日常的にありますよね。
磁場にも正と負があるように、呼吸にも呼気と吸気があります。また頑張ることも、気を抜いて遊ぶこともその人のバランスです。仕事と休息のバランス、他者の話をしっかり聴くことと自分の気持ちを明確に伝える自己表現とのバランス。また時には、前進ばかりではなく立ち止まったり後退してみることも、とても大切なバランスです。人それぞれが自分自身の感性で心地よいバランスをとっていき、それが結果的に人との間のよいバランスに繋がるならば平和な世の中が樹立されるのではないでしょうか。
ところが問題となるのは、“良い・悪い” “正しい・間違っている” “ポジテイブ・ネガテイブ”といった、人々の中にある価値判断の基準です。
この分離した極(きょく)が自分を含め、人類一人ひとりの中にあるために、対極に見えるものを非難・判断し、自分の中のバランスや周りのバランスを崩してしまいます。その結果、様々な人生模様を創りだして、泣いたり笑ったりしながら生きているのが私たちです。
今、世界の脅威となっている戦争も、もとは宗教や価値観における相違が一つの大きなきっかけであることは間違いありません。実は相反するものもすべてバランスをとることでしか調和は生まれません。また相反するものがあるからこそ、調和を生み出そうとするエネルギーが働き、人類が気づいていくチャンスとも言えるのです。
闇を知らなければ光を理解できません。闇が無ければ光の存在は見えません。
光と闇の両方を経験することによって、より広い深い経験を創りだすのです。
賢者の言葉
人それぞれの中にある観念・信念・判断・制限…等々の枠組みでもって、自身や他者の価値観を判断し、“私とあなたは違う” というふうに分断していく。これを「分離意識」と言います。この分離意識を超えていくために深い理解が必要ではないかと思われますのは、一人ひとりの価値観に間違いというものはないということ、また今その人がどんなプロセスを生きていても当人にとっては必要なプロセスを踏んでいるのだということです。
分離意識がある限り、私たちは混迷・苦しみ・痛みの中で生きていくことになります。「あの人の考え方はおかしい」「私には~が無いから価値が無い」「あの人より私の方が正しい」「私は負け組だ」…等々。極(きょく)の世界観がある限り、本当の安らぎ・歓びは無くて、常に誰かと比較し闘い、その結果、不安恐怖の中で生きることになります。
そろそろ私たちは、対極のどちらにも偏らない生き方、つまり分離意識からバランス意識へと統合していく時代なのではないかと感じます。どっちつかずという安易なものではなくどちらにも偏らない生き方、つまりニュートラル(中庸)な視座に立つ生き方です。
例えば、対極にある“闇と光”について考えてみましょう。つまり先ほどの賢者の言葉が示す視座です。闇があって光がより深く感じられる。闇も敵にまわすことなくどちらの極にも偏らず真ん中に立ってみる。それが統合です。闇を見ないということではなく、向き合いつつも怖れたり戦ったりしない。光にもとらわれない・闇にもとらわれない。賢者の言葉だけあって相当深いレベルの話ではありますが、まずは、対極にあるものを静かな心で見つめてみることはバランスを取り戻すためにとても大切な心組みだと思います。
どちらの状態をも受け入れることによって、葛藤から抜けられます。
言い換えればポジテイブな考え、ネガテイブな考えの両方を
どちらが上だとの順番をつけずに受け入れるのです。
これは愛の行為です。愛はいつでも、如何なる二極性をも超越します。
愛は決してどちらかに与(くみ)しません。両方の側面を受け入れます。
ポール・フェリーニ
“いいバランスとは~です”…それは誰も教えてはくれません。自分の中の価値判断に気づき、頭のレベルで考えることを少しゆるめて、自分の感性に頼るしかありません。知らず知らずに取り込んだ固定観念に気づき、それを解放しながら自分の心のリズム、身体のリズムを大切に生きる。するといつの間にか無意識に呼吸をしていると同じように、自分にとって快適ないいバランスを掴めるようになるのではないでしょうか。そのままでいい、存在しているままでいい…と言った双方を見つめる大らかな愛の視点が、分離意識を卒業し、すべてを解決に向けていける力(ちから)となるのではないでしょうか。
バランスは目には見えないが、感じられる
レオナルド・ダ・ヴィンチ
*次回のコラムは2025年10月20日前後の予定です。