2017年12月20日水曜日

父親になるのは簡単だが、父親たることはなかなか難しい(その3)

父親になるのは簡単だが、父親たることはなかなか難しい
ヴィルヘルム・ブッシュ
Column 2017 No.55

 前々号より、父親という観点から同じテーマで書いていますが、このシリーズは今回で一応終わりです。前回までに書いたことを少し纏めて今回に入ります。

Ⅰ.どんな形であれ、父親もしっかりと子どもに係わっていくコラムNo53

 思春期に入ると、親が子どもにどうかかわったかの結果が出てきます。しかし思春期に入っていても、成人期に入っていても、そこから子どもに正直に関わっていくことで親子関係は違ってきます。

Ⅱ.“父親の役割”“母親の役割”にこだわらず、ひとりの人間として正直に子どもに接していくコラムNo54

 “ひとり一人の親の中に父性と母性を”…親業が大切にしている視点です。父親だから、母親だから…ではなく、それぞれが一人の人間として、自分の感性を信じて、正直に子どもに接していきます。

Ⅲ.正論は子どもを追い込みますコラムNo54

 正論は子どもの心に届かないばかりか、子どもの心を追い込みます。人間的な正直なお父さんで、本当の気持ちを伝えましょう。それでこそ子どもの心と繋がれるのです。次からが前回の続きです。

Ⅳ.仕事だけが人生ではありません。生きて実感することこそが人生です

仕事だけが人生ではありません。生きて実感することこそが人生です

 ある父親の言葉です。「…自分は会社の仕事でいっぱいいっぱい、エネルギー切れの状態で帰宅します。だから子どもに邪魔されたくない…。だからと言って子どもに寂しい思いをさせている負い目もあって、気になる子供の行動を正面から叱ることもできないです…」と。

 多くの父親は家族のためにという大義名分のもとに過酷なほどに働いています。ほんとうに家族のためなのでしょうか…。仕事の実績で、或はいい地位に就くことで、自分の価値を無意識に認めようとしていることはないでしょうか。また、沢山の仕事を持ち込んでいないと、自分に価値が無いような仕事依存傾向に陥っていることはないでしょうか。

 また子育てや家事に孤軍奮闘している妻の大変さや、夫の不在が多い妻の寂しさ・虚しさ…等々に気づいている夫はどれだけいるでしょうか。たまに在宅していても、夫の仕事延長上にある不機嫌な雰囲気に辟易している妻や子ども…。父親不在であるがゆえに起こる子どもの問題…等々。

 そこまで仕事にのめり込むことが、本当に家族のためと言えるのでしょうか。しかし父親にも言い分があります。“…せっかくの休みでも家族の話題の中に入れない…家の中に自分の位置がないんです…。そのやりきれない孤独感がなおさら仕事に向かわせるのだ…”と。

僕は「家族力」を日々高めていくことを強く認識しています。
家族や一番親しい人との関係を大切にしていくことが、結局
自分の人生に最大の効果をもたらすと信じているからです。
武田 双雲

Ⅴ.父親も人生を楽しむ権利と義務があります

 両親の離婚を経験した21歳(学生)の一文です。「…両親が、父と母である前に、一人の人間として生き方を確立し、人生を楽しむことこそが何よりも子どものためになると思います…」(ある投稿欄より)

 楽しむことの大切さを子ども達は分かっています。楽しむことこそが機嫌のいい父親、機嫌のいい母親になれるためのポイントだということを知っているからだと思います。確かに機嫌のいい両親のもとで育った子供は、精神的にもとても安定し、健康です。ある受講者Nさんのご主人様からずっと以前こんな一文を頂きました。

私のやりたい10項目の実践です(こんな日にしたいトップ10)
 ①だらだらする日 ②よく眠る日 ③映画を観る日
 ④ハワイ気分でのんびりする日 ⑤日曜大工をする日
 ⑥何かたくらむ日 ⑦ドラムをたたく日 ⑧本を読む日
 ⑨皆でわいわい酒を飲む日 ⑩バイクでドスドス走る日

 心が喜ぶことを果敢に実践していらっしゃるからでしょう。本当に機嫌のいいお父様だったのを記憶しています。男性も一人の人間として楽しむ権利があります。それは何よりも、自分の幸せの為であり、その結果まわりの人々、とりわけ子どもを幸せにしていくのだ…という側面からいえば、楽しむことは“義務”である…とも言えないでしょうか。

 仕事の合間のひとときに、心をふっと緩めてみる…。若い頃からやりたかったことを、今からでも思い切ってやってみる…。“そんな時間ないですよ!”という反論が聞こえてきそうです。でも、人生ほんとうにそれで終わってもいいのでしょうか。

Ⅵ.子どもは父親の後姿を見ています

 ある主婦が、投稿欄にこんな一文を寄せていました。
 「大酒のみで頑固者だった父を、小学生の頃の私はとても疎ましく思っていた。五年生の夏休み、母に頼まれて、父の働く鉄工所へ弁当を届けたことがあった。歩いて20分もかかるので、渋々出かけた私は汗だくになってしまった…。簡単な作りの工場に入ると、火のような熱風の中で父は裸で働いていた。日に焼けつくトタン屋根の下、溶鉱炉の前でスコップを持った父は、火と熱風にさらされ、埃と汗にまみれて真っ赤だったのをはっきりと覚えている…。父の働く姿を初めて目にした帰り道、私は少しも暑いとは思わなかった。あんなところで一日中働く父を、とても偉いと思った。酒飲みだろうが、頑固だろうが構わないと思った…」

父は、私に生きるすべを教えはしませんでした。
生きざまを見せてくれたのです
クレランス・バデイトン・ケランド

しかし、今の時代、親の働いている姿を子どもに見せることは、かなり難しい時代になりました。だからこそ綺麗ごとではなく自分の生きざまを、正直に本音で子どもや妻に語っていくことが大切な時代とも言えます。語らずして相手に理解して貰うことは難しいのです。いっぱいいっぱいで帰宅して、不機嫌に家族に接したり、酒やテレビで紛らわせていたら、孤独地獄に陥るしかありません。他者と繋がる為には、やはり本音のコミュニケーションが必要なのです。本音とは、相手のことを語るのではなく、自分の思いを伝えることです。

 コラムNo54で触れましたが、その為にも時には仕事から離れて子どもと遊んだり、やりたいことをやって人生を楽しみ、日々を実感して生きてみることが大切です。すると自分の心の位置が分かり、本当の気持ちが見えてきます。すると自分の本音が自然に語れるようになり、人と繋がれるのです。仕事だけが人生ではありません。生きて実感することこそが人生です。

*次回のコラムは1月20日前後の予定です。

2 件のコメント:

  1. 武田 双雲さんの言葉、素敵ですね。ご職業柄、時間を自由に使えておられると想像しますが、それ以外に自分に対峙しないといけない環境でもあるのだろうな と思います。 それぞれの立場で世の中にこの思いが浸透して行ったらいいなぁと素直に思いました。

    もっと早くに親業を知っていたら・・・見栄で家事をしていた時間を子どもとの時間に使っていただろうけど・・・。
    親業で自分の思いを言葉で伝えることを知ったから・・・今は自分を語ると上手に聞いてくれる人(子どもたち)がいました。
    年末でそろそろ三人が揃います。自分の思いを語り、子どもたちの思いを聞き、夫共々、楽しい時間を過ごしたいと思います。

    返信削除
    返信
    1. MOONさま

      おっしゃっている様に 武田 双雲氏の言う「家族力」が世界に浸透していったら きっと世界は平和に大きく一歩近ずくでしょうね。気づいた所から出発ですね。

      父親もそして母親も、もっともっと自分を大切にすることから出発していくことで 「家族力」は増し 更にエネルギーを持って くるでしょう。

      お正月は お子たちがみんな揃うのですね! ワクワクしますね! これまでお母さんは 子供たちの話すことを 心を込めて聴いていらしたので 子供たちも お母さんが話すことを心を込めて聴いてくれますよね。お正月の心通うひと時をいっぱい楽しんでくださいね!

      削除

コメントをどうぞ☆