対人関係のポイントは聞く力にある
ピーター・ドラッカー
ピーター・ドラッカー
ピーター・ドラッカーは、オーストリア出身の現代経営学の基礎を築いた人物で、“マネジメントの父”とも呼ばれており、ビジネスの世界に生きている人々でその名を知らない人はまずいないでしょう。没後10年以上たった今も、その理論は多くの経営者の模範とされています。彼がマネジメントの上で大切にしていたことは、社会・組織の中での「人間」という観点でした。特に人間関係に於けるコミュニケーションを大切にしており、次のように語っています。
書籍の中では「聞く」と訳されていますが、日本には「聴く」という漢字の語彙があります。彼の言いたい意味は、“聞く”というより、実は「傾聴」という姿勢に近いのではないか…と思います。「聴」と言う文字には、耳と目と心が合わさっています。それはまさに相手(顧客・来談者)のお話を聴くために非常に大切な三つの姿勢です。カウンセリングの場で私も大切にしている姿勢です。
真摯な目線(まなざし)で相手の気持ちの動きを感じとり、相手が言わんとする事実を耳で正確に受けとり、私心を脇において、心をいっぱいに開いて聴いていく…。すると不思議ですが相手は、徐々に自分の心をオープンにして、本当の気持ちを話してくださいます。…というよりも、相手が語りたい本当の気持ちが流れてくる…と言った方が近いかもしれません。
一般的に「きく」と言う姿勢には幾らか違う意味があります。
・聞く……相手が話している事実の内容を聞きとる
・訊く……相手のことに関して尋ねる
・聴く……耳だけでなく、心とアイコンタクトを大切にしてハートで聴き取る
まさに「聴く」という姿勢こそが、本気で聴く姿勢であり、他者を大切にした姿勢なのです。親業講座ではコミュニケーション能力を磨くために「聴き方」や「伝え方」の双方向コミュニケーション(コラムNo10)の方法・理論をお伝えし、訓練(練習)をしていきます。今回のテーマである「聴く」と言う側面は、双方向コミュニケーションのうち“相手を大切にする” 側面です。
…と、「対話と説得の技術」の著者、ラルフ・G・ニコルス博士は語っていますが、真実だと思います。しかし…「私ね!話し方教室に行っているのよ」と言うことはよく聞きますが、「私ね!聴き上手になる勉強をしているのよ」…はあまり聞いたことがありません。ちなみにアメリカのある土地で「聞き方教室」という公開講座を開いたところ、時間になったが一人の出席者もなかった…という報告を耳にしたことがあります。今の社会では“人の話をよりよく聴けるようになる”…と言うことにはまだあまり価値を置かれていないようです。
ずっと昔に読んだ、三國一朗氏の「話術~会話と対話~」という本の中に、興味深い一文がありました。「…女の人達が話しているのを聞いていると、小鳥たちが木の枝にとまってさえずりあっている、それと同じで、お互いに好き勝手に口を動かし声を出し合っている。その間に多少の情報のやり取りはあっても、要するに声の出しっこに過ぎません。相手の話を聞いているようには見えますが、本当は、相手の話が一段落するのを、今や遅しと待ち構えているに過ぎない。相手が一秒でも半秒でも話しやめたら、すぐさましゃしゃり出てしゃべり始める。そういう姿勢の連続ですから一見賑やかで楽しそうに見えても、決して会話と言うものではなく、小鳥たちと50歩100歩のさえずりくらべなのです…」
…思わず笑ってしまいましたが、それぞれが勝手におしゃべりしていて聴く人が全くいない女性の集まり…私もよく出会う場面です。ドラッカー氏も言っているように、未来は“他者の話が本気で聴ける人”つまり“人を大切にし人を生かす能力のある人”が、仕事のパイオニアとなり真のリーダーになっていくのでしょう。また、家庭にあっては、子どもが話すことを親がしゃしゃり出て邪魔することなく、子どもが考えていることを、耳と目とハートで本気で聴きとっていく。それは子どもが自分の生き方に自信を持ち、真の自立に向かえる一番大切な姿勢なのです。
親業の聴き方 (コラムNo12) を改めてご紹介しましょう。私の講座を受講下さったHさんの事例です。
思春期に入り、少し太っていることをとても気にしている長女。気分が不安定になると叫んで訴えてくる。
長女「あ~ん!すごい太っていやじゃ~!」
母 「太るのがいやなんじゃねえ…」
長女「もうこのおなかいやなんよ~!」(泣きながら…)
母 「いやなんよねえ…」
長女「もういやよ!私ばっかり太っとるけん!」(わ~ん!ベッドで伏せて泣く)
~母 沈黙…1~2分~ 長女、がばっと起き上がり
長女「腹筋するけん 足もって!」
母 「いいよ」
<気づき>
聴き方を学んだことで、沈黙することの大切さも知りました。何か言ってやらなければ…といつも言葉を捜していたことが、不自然だったり、余計なお世話に繋がっていたことに気付きました。子ども自身で解決する力があることを信じ、待つ姿勢を大切にしていきたいと思います。
Hさんがおっしゃってる通りです。子どもは、自分の人生に関することは自分で考える力を持っています。考えを与えすぎると混乱してしまいます。子どもが感じていることを、ただそのまま受け取ってあげて、子どもが自分の人生から脱線しないように、聴くことで援助していくのです。勿論、自己表現(コラムNo11)も大切です。特にお母さん自身が自分の人生を充実していく為にはとても大切なコミュニケーションです。しかし子どもの真の自立は、親が本気で「聴く姿勢」なしには望めないのです。
話し上手だから人との関係は得意だと多くの人が思っている。
対人関係のポイントは「聞く力」にあることを知らない
過去のリーダーの仕事は「命じること」だが、
未来のリーダーの仕事は「聞くこと」が重要である
書籍の中では「聞く」と訳されていますが、日本には「聴く」という漢字の語彙があります。彼の言いたい意味は、“聞く”というより、実は「傾聴」という姿勢に近いのではないか…と思います。「聴」と言う文字には、耳と目と心が合わさっています。それはまさに相手(顧客・来談者)のお話を聴くために非常に大切な三つの姿勢です。カウンセリングの場で私も大切にしている姿勢です。
真摯な目線(まなざし)で相手の気持ちの動きを感じとり、相手が言わんとする事実を耳で正確に受けとり、私心を脇において、心をいっぱいに開いて聴いていく…。すると不思議ですが相手は、徐々に自分の心をオープンにして、本当の気持ちを話してくださいます。…というよりも、相手が語りたい本当の気持ちが流れてくる…と言った方が近いかもしれません。
一般的に「きく」と言う姿勢には幾らか違う意味があります。
・聞く……相手が話している事実の内容を聞きとる
・訊く……相手のことに関して尋ねる
・聴く……耳だけでなく、心とアイコンタクトを大切にしてハートで聴き取る
まさに「聴く」という姿勢こそが、本気で聴く姿勢であり、他者を大切にした姿勢なのです。親業講座ではコミュニケーション能力を磨くために「聴き方」や「伝え方」の双方向コミュニケーション(コラムNo10)の方法・理論をお伝えし、訓練(練習)をしていきます。今回のテーマである「聴く」と言う側面は、双方向コミュニケーションのうち“相手を大切にする” 側面です。
私たちは聴く方法を教えられていないが故に聴くことが下手なのだ
…と、「対話と説得の技術」の著者、ラルフ・G・ニコルス博士は語っていますが、真実だと思います。しかし…「私ね!話し方教室に行っているのよ」と言うことはよく聞きますが、「私ね!聴き上手になる勉強をしているのよ」…はあまり聞いたことがありません。ちなみにアメリカのある土地で「聞き方教室」という公開講座を開いたところ、時間になったが一人の出席者もなかった…という報告を耳にしたことがあります。今の社会では“人の話をよりよく聴けるようになる”…と言うことにはまだあまり価値を置かれていないようです。
ずっと昔に読んだ、三國一朗氏の「話術~会話と対話~」という本の中に、興味深い一文がありました。「…女の人達が話しているのを聞いていると、小鳥たちが木の枝にとまってさえずりあっている、それと同じで、お互いに好き勝手に口を動かし声を出し合っている。その間に多少の情報のやり取りはあっても、要するに声の出しっこに過ぎません。相手の話を聞いているようには見えますが、本当は、相手の話が一段落するのを、今や遅しと待ち構えているに過ぎない。相手が一秒でも半秒でも話しやめたら、すぐさましゃしゃり出てしゃべり始める。そういう姿勢の連続ですから一見賑やかで楽しそうに見えても、決して会話と言うものではなく、小鳥たちと50歩100歩のさえずりくらべなのです…」
…思わず笑ってしまいましたが、それぞれが勝手におしゃべりしていて聴く人が全くいない女性の集まり…私もよく出会う場面です。ドラッカー氏も言っているように、未来は“他者の話が本気で聴ける人”つまり“人を大切にし人を生かす能力のある人”が、仕事のパイオニアとなり真のリーダーになっていくのでしょう。また、家庭にあっては、子どもが話すことを親がしゃしゃり出て邪魔することなく、子どもが考えていることを、耳と目とハートで本気で聴きとっていく。それは子どもが自分の生き方に自信を持ち、真の自立に向かえる一番大切な姿勢なのです。
親業の聴き方 (コラムNo12) を改めてご紹介しましょう。私の講座を受講下さったHさんの事例です。
思春期に入り、少し太っていることをとても気にしている長女。気分が不安定になると叫んで訴えてくる。
長女「あ~ん!すごい太っていやじゃ~!」
母 「太るのがいやなんじゃねえ…」
長女「もうこのおなかいやなんよ~!」(泣きながら…)
母 「いやなんよねえ…」
長女「もういやよ!私ばっかり太っとるけん!」(わ~ん!ベッドで伏せて泣く)
~母 沈黙…1~2分~ 長女、がばっと起き上がり
長女「腹筋するけん 足もって!」
母 「いいよ」
<気づき>
聴き方を学んだことで、沈黙することの大切さも知りました。何か言ってやらなければ…といつも言葉を捜していたことが、不自然だったり、余計なお世話に繋がっていたことに気付きました。子ども自身で解決する力があることを信じ、待つ姿勢を大切にしていきたいと思います。
Hさんがおっしゃってる通りです。子どもは、自分の人生に関することは自分で考える力を持っています。考えを与えすぎると混乱してしまいます。子どもが感じていることを、ただそのまま受け取ってあげて、子どもが自分の人生から脱線しないように、聴くことで援助していくのです。勿論、自己表現(コラムNo11)も大切です。特にお母さん自身が自分の人生を充実していく為にはとても大切なコミュニケーションです。しかし子どもの真の自立は、親が本気で「聴く姿勢」なしには望めないのです。
あなたはいつも原因を訊いても、私の気持ちは聴かない
~邦画「幼な子われらに生まれ」の中の前妻のセリフ~
「寒いね」と話しかければ「寒いね」と
答える人のいるあたたかさ
俵 万智
「聞き方教室」わたしは聞いたことがないです。出席者が一人も集まらなかったとのこと。聞くことの重要性を以前から唱えていても時代(人間)がなかなか気づいていないのですね。
返信削除我が子達と話をする時「聴く話す」をしていると思いがけず誤解していた出来事が解明されることがあります。
「聴く」は生涯の宝物になると先生から教えていただいたことを多方面で日々実感しています。
私は最近相手を大切に思えずその人の話を聴く気にならない自分を体験をしました。「聴く」は自分大切、相手大切が必要なんだなぁ・・・と感じているところです。
要、日々の自分大切、相手大切と「聴き方」の両輪ですね。
MOONさま
削除ほんと! 「聴く」ということの重要性はまだまだ多くの人が気づいていませんね。聴くということは尋ねることではなく、相手が話している事をそのまま受け取ってみる…。かなり訓練が要りますよね。親業ではその「聴き方」を学び、訓練しました。とても大切にしているコミュニケーションですよね。それによって子どもたちは大きく自立していきました。
コラムでも触れたように聴き方を学んでいないが故に、小鳥のさえずり比べ(笑)になってしまうんですね。昔から「話し上手は聞き上手」と言われているように聴くことはコミュニケーションの原点であることは間違いないですよね。
でもMOONさんが仰っていますが、人間関係が出来ていない相手や、苦手とする人の話は聴く気にならない…。当然ですよね。無理をしないことです。聴き方をマスターしていらっしゃることが大切で、あとは「聴く」「伝える」はその場その場での選択です。