起こってしまったことは変わらない。でも人の心は変わります
・・邦画「コーヒーが冷めないうちに」より
Column 2018 No.65
話題のベストセラー小説「コーヒーが冷めないうちに」が、同じタイトルで映画化されました(塚原あゆ子監督)邦画を観るのは久々でしたが、ファンタジックで、実に面白く興味深い映画でした。
ある不思議なカフェがある。そこの女主人が淹れるコーヒーを飲むと、タイムスリップができ、悔いの残る人に逢うことが出来る。過去のその時点での相手に、伝え残した自分の気持ちを伝え、またその時の相手の本当の気持ちをも聴くことが出来る…というセッテイング。
しかし、それにはちょっぴり面倒で厳しい約束事があって、過去に戻れる席はカフェの中のただひとつの席だけ。そして淹れてもらったそのコーヒーが温かい間のひとときだけがチャンス。コーヒーが冷めないうちに飲み干さなければ、現実に戻ることができなくなり、幽霊として生きるはめに陥る…(笑)
悔いが残る人に逢うと、やはり人間なので執着が起こり、“この人とずっと一緒にいたい!現実に帰りたくない!” “それでも戻らなくては!”…その葛藤に苦しむ登場人物の心情に…その都度、深い共感で心揺さぶられるのでした。
もうひとつ約束事があります。過去に戻って、悔いの残る人と逢って、たとえ何を伝えても、何をしたとしても、起こってしまったことは変えられない…という厳しい原則。 それでも人は悔いの残る人に逢いたいのです。現実は変わらないにしても、言い残したことを伝えることで、その人の気持・心情には、決まり(決着)がつき、それからの生き方・人生は変わっていく…。
私自身が、もしあの日に戻れるとしたら…私は「父」に逢いたいと思いました。私の心の中に悔いが残っている人のひとりです。父は心から子どもを愛していました。それに本当に気付いたのは、父が亡くなってから…のことでした。情の深い人でしたが、生前はお酒好きで、短気で怒り早く、自己表現が不器用で、私は父の前でいつも緊張していたような気がします。何のことだったか忘れてしまったのですが、ある日、私の気持ちが大爆発してしまい、父に対して「私はお父さんからの愛を感じたことがない!」…と言い放ってしまったのです。そのとき父は黙って涙をぬぐっていました…。この場面を思い出すたびに胸が締め付けられるような思いになります。なんてひどいことを言ってしまったんだろう…と。本当は愛されていたんだ…と伝わってくる過去の、数々の場面が思い出されてくるだけに、とても切なくなるのです。
もし過去に戻れて「父」に逢えるとしたら、私は心をいっぱいに開いて、父に伝えたいと思います。「お父さんごめんなさい!あなたの本当の愛に気づいていなかったことを…。気付くのが遅かったけど、心から有難う!お父さん愛しています!そして大好き!」…と。父を“傷つけてしまった”過去の事実は変えられないとしても、映画のその場面のように、実際に逢って本当の気持ちを表現するだけで、私の気持ちには決着がつき、さらに前に向かって歩いて行けるような気がするのです。
私は今、しみじみと思うのです。過去に戻って気持ちを伝え直さないで済むように、大切な家族やご縁ある人に、私がいまこの時に感じている心からの愛情や本当の気持ちを、そのまま“今”正直に伝えておきたい…と。そうしないとコーヒーはあっという間に冷めてしまいます…。父の涙を見たとき「お父さんごめんなさい。言い過ぎたわ…」だけでも、そのとき、勇気をもって伝えられていたら、私の中にこんな悔いは残らなかったかもしれません。
次は私の受講者のKさんから頂いたお手紙の一節です。
「…いずれ巣立っていく子ども達と、こんなに毎日しっかりと、向き合える時間を与えてもらっていることは、私にとって宝のような時間だ…と思えるようになってから、娘・息子のさまざまな言葉や、表情、しぐさを胸に焼き付けておこうと思うようになりました。いま世の中は、天災、テロ、事故…何が起きてもおかしくない毎日だから、思った時に「大好き!」「愛してる!」「あなたは宝物よ!」と、感じたことを後悔しないように伝えるようにしています……」
再び同じ“今”は来ない…ということを理解していらっしゃるKさんは、このひとときに感じている、子どもへの愛情や本当の想いを、後悔しないように“今”伝えておこう…と。Kさんは、コーヒーが冷めないうちに…の理(ことわり)を実に深く理解している人だと思ったことでした。こうして受講者の方々からも学ばせて頂けるこの幸せなひとときを、私は大切にしたいと思います。そう!コーヒーが冷めないうちに…。
ある不思議なカフェがある。そこの女主人が淹れるコーヒーを飲むと、タイムスリップができ、悔いの残る人に逢うことが出来る。過去のその時点での相手に、伝え残した自分の気持ちを伝え、またその時の相手の本当の気持ちをも聴くことが出来る…というセッテイング。
しかし、それにはちょっぴり面倒で厳しい約束事があって、過去に戻れる席はカフェの中のただひとつの席だけ。そして淹れてもらったそのコーヒーが温かい間のひとときだけがチャンス。コーヒーが冷めないうちに飲み干さなければ、現実に戻ることができなくなり、幽霊として生きるはめに陥る…(笑)
悔いが残る人に逢うと、やはり人間なので執着が起こり、“この人とずっと一緒にいたい!現実に帰りたくない!” “それでも戻らなくては!”…その葛藤に苦しむ登場人物の心情に…その都度、深い共感で心揺さぶられるのでした。
もうひとつ約束事があります。過去に戻って、悔いの残る人と逢って、たとえ何を伝えても、何をしたとしても、起こってしまったことは変えられない…という厳しい原則。 それでも人は悔いの残る人に逢いたいのです。現実は変わらないにしても、言い残したことを伝えることで、その人の気持・心情には、決まり(決着)がつき、それからの生き方・人生は変わっていく…。
私自身が、もしあの日に戻れるとしたら…私は「父」に逢いたいと思いました。私の心の中に悔いが残っている人のひとりです。父は心から子どもを愛していました。それに本当に気付いたのは、父が亡くなってから…のことでした。情の深い人でしたが、生前はお酒好きで、短気で怒り早く、自己表現が不器用で、私は父の前でいつも緊張していたような気がします。何のことだったか忘れてしまったのですが、ある日、私の気持ちが大爆発してしまい、父に対して「私はお父さんからの愛を感じたことがない!」…と言い放ってしまったのです。そのとき父は黙って涙をぬぐっていました…。この場面を思い出すたびに胸が締め付けられるような思いになります。なんてひどいことを言ってしまったんだろう…と。本当は愛されていたんだ…と伝わってくる過去の、数々の場面が思い出されてくるだけに、とても切なくなるのです。
もし過去に戻れて「父」に逢えるとしたら、私は心をいっぱいに開いて、父に伝えたいと思います。「お父さんごめんなさい!あなたの本当の愛に気づいていなかったことを…。気付くのが遅かったけど、心から有難う!お父さん愛しています!そして大好き!」…と。父を“傷つけてしまった”過去の事実は変えられないとしても、映画のその場面のように、実際に逢って本当の気持ちを表現するだけで、私の気持ちには決着がつき、さらに前に向かって歩いて行けるような気がするのです。
私は今、しみじみと思うのです。過去に戻って気持ちを伝え直さないで済むように、大切な家族やご縁ある人に、私がいまこの時に感じている心からの愛情や本当の気持ちを、そのまま“今”正直に伝えておきたい…と。そうしないとコーヒーはあっという間に冷めてしまいます…。父の涙を見たとき「お父さんごめんなさい。言い過ぎたわ…」だけでも、そのとき、勇気をもって伝えられていたら、私の中にこんな悔いは残らなかったかもしれません。
言い過ぎもせず 言い残しもなく 自分の心をきちんと
表現できたら その日は幸せな一日
出典:サインズ
次は私の受講者のKさんから頂いたお手紙の一節です。
「…いずれ巣立っていく子ども達と、こんなに毎日しっかりと、向き合える時間を与えてもらっていることは、私にとって宝のような時間だ…と思えるようになってから、娘・息子のさまざまな言葉や、表情、しぐさを胸に焼き付けておこうと思うようになりました。いま世の中は、天災、テロ、事故…何が起きてもおかしくない毎日だから、思った時に「大好き!」「愛してる!」「あなたは宝物よ!」と、感じたことを後悔しないように伝えるようにしています……」
再び同じ“今”は来ない…ということを理解していらっしゃるKさんは、このひとときに感じている、子どもへの愛情や本当の想いを、後悔しないように“今”伝えておこう…と。Kさんは、コーヒーが冷めないうちに…の理(ことわり)を実に深く理解している人だと思ったことでした。こうして受講者の方々からも学ばせて頂けるこの幸せなひとときを、私は大切にしたいと思います。そう!コーヒーが冷めないうちに…。
幸福には明日という日はありません。昨日という日もありません。
幸福は過去のことを記憶してもいなければ、将来のことも考えません。
幸福は現在があるだけです。今日という日ではなく、
ただ、“いま”のこの瞬間があるだけです
ツルゲーネフ
*次回のコラムは11月20日前後の予定です。
そうですね。起こってしまったことは変えられませんよね。
返信削除だから、私は悔いるんですよね。しまった!あの時もっと冷静でいれば、相手にきちんと対応できたのにって。
でも、私の心は変わるんですよね。いえ、変えることができるんですよね。
あの時言いたかったことは、○○なんだよね。で、私はどうしたいと思っているんだろう?と考えてみる。そうして、自分の納得のいくようにしようと思う。
そう考えると気が楽なのですが、
あの時は言えなかった自分が後悔されて、クジクジしている時の時間がフラッシュバックのように現れるんです。
まあ、少しずつ進んでいこうと自分を慰めていま~す。
Kiyokoさま
削除Kiyokoさんの「起こったことは変えられませんよね……でも私の心は変わるんですよね。いえ、変えることができるんですよね…」の一文! 私が一番お伝えしたかったことで、大
共感でした。
私たちは人間関係でのコミュニケーションの失敗を含めて、多くの過ち(…と思ってきたこと)は、あとで観ると、自分自身のとても大きな成長に繋がっていますよね。自分にとっては絶妙な失敗だったと思える程に…。私たちの魂の「気づき」という力は宝ですよね。
そうそう! もう終わったことなのに あの時はこうすればよかった…あのときはこう言うべきだった…ジグジグ思い出して、格闘する事ってありますよね。お互いにそんな時には 自分なりのツールを使って 上手に手放していきましょうね。「ありがとう! 気づかせてくれて。もう行っていいよ…」みたいに (笑) 魂がクリーニングされていくごとに 私たちは 罪悪感や不安から 解放されていくのだと思います。有難うございました!
先生のお父様への気持ちを読んで涙腺が緩みました。
返信削除私も映画を見ました。
過去に戻らなくていいように今、伝えたいことを伝えておこう・・・
私は県外に暮らす次女に郵送する書類を映画を観る数日前に用意をしていました。
次女には能動的な聞き方のモデリングが少なかった(ある意味育てやすかった)ので、彼女が人の話を能動的に聞いていないのが常々気になっていました。映画を観た後、帰宅して親業の黄色い表紙の小さな親子手帖を郵送する物に追加しました。が、いきなり冊子を送ることに踏ん切りがつかず封をしないまま置いていました。すると普段あまり電話をしてこない次女から電話がありました。たわいもない話をしたことで踏ん切りがつき封をしました。すぐにSNSで「親業の小さな冊子も入れときます。私が元気であなたが結婚する前に伝えたいって前から思ってたとこと」と送信して・・・。封筒の中には「あなたが子どもの頃、能動的に聞いていたつもりだったけど、聞けていなかったらごめんね」と一筆添えました・・・。
以前から気になったいた事を伝えることにした私。
映画の内容が私の中にすーっと入っていたこと、すぐに封をしなかったこと、次女から電話があったこと・・・過去に戻りたいと思わなくていいようにできるだけ伝えたいことを伝えたい とぼんやり思う私に起きた私だけのドラマ。伝えたいことを伝えようとすると伝えられる とも思える出来事でした。そして、日ごろから自分の感度を大切にすること・・・と再認識しました。
MOONさま
削除映画を観て下さったのですね! 次女さんに送るお手紙の封をしないまま映画に…と。
次女さんに対してお母さまは " もう少し共感を大切にして接するべきだった… "という悔いが少し残っていらした…。観た映画の内容がすっとお母さまの心に届き 次女さんがご結婚をされる前に、ぜひ親業の本を次女さんに読んでもらいたいと思われ始めた。…封をしていなかったので冊子を同封したものの、でも押し付けになってはいけないし…どうしたものやらと、迷っていらしたところに 滅多にかけてこない次女さんから偶然に電話が! 次女さんと話している内に、いよいよ踏ん切りがつかれた!
摩訶不思議な偶然が重なりましたねえ! 偶然といえども それはやはりMOONさんの感度の良さの結果だと思います。封を閉じられないでいらしたこと、映画をご覧になったこと、そして次女さんからの(もちろん無意識の) 後押し! まさに「コーヒーが冷めないうちに」…お母さまの想いを伝えることができて 本当によかったですね! 私もホッとしたことでした。