2022年11月20日日曜日

嫌われてもいい勇気をもつ

 ★2023年★の講座予定を公開しました  2023年 講座開講スケジュール

Column 2022 No.114

 ここ数年、この「嫌われる勇気」と言うフレーズが大変ポピュラーになりました。フロイト、ユングに並ぶ心理学者の三大巨匠のひとりと言われるアルフレッド・アドラー心理学についての書籍に、題名として使われました。

 “10人10色(じゅうにんといろ)”…という諺がありますが、まさに人は一人ひとり姿かたちが違うように、価値観も主義主張も人それぞれです。だからみんなに好かれるということはまず考えられないことなのです。しかし私たちはどこかですべての人に好かれるような人物になることが素晴らしいことだ…と強迫的に信じていることはないでしょうか。

 その結果、自分の感じ方は後回しにして、周りに合わせて嫌われないように、悪く思われないようにとふるまってしまうことが起ります。周りに合わせた生き方をすることを、ある心理学では「過剰適応」と表現しています。

例えば
とても傷ついているのに笑ってごまかしたり
行きたくないのに誘いを断れなくて行く羽目になったり
自分の意見とは違うのに同調したり
その場の雰囲気を壊さないように過剰に明るく振舞ったり

 つまり、自分に重心を置くかわりにいつもベクトルが他者に向くので、生きている実感が薄く、日常的に心身ともに疲れて、ベースは不機嫌となりがちです。なぜ周りについ過剰に適応しようとしてしまうのか。その正体は、自己イメージが低いことが原因となっています。自己イメージが低い為に「すべての人に好かれたい。人に好かれることで初めて自分に価値が感じられる」という気がしてしまう…。

  一方、過剰適応で生きている人の多くは、自分の中で本当は不正直に生きている現実に大なり小なり気づいており、その息苦しさを何とかしたいと思っているのです。だから冒頭の「嫌われる勇気」と言うフレーズに、爆発的に多くの人々が反応したのだと思います。

 しかし、嫌われる勇気を持つ… 頭では理解できても、本当は簡単ではないのです。自己イメージをいかに上げていくかがポイントだからです。自己イメージが高くなってくるに従って、重心が自分自身の中に戻り、価値基準を他者ではなく自分自身に置き始めるので、他者が自分をどう評価しようとあまり関心がなく、大して気にならなくなるのです。

 私たちは 他者の為にのみ生きているのではないはずです。“魂の成長 ”といった課題を持ち、そこに到達するべく意図を無意識ながら一人ひとりが持っているものだと、私は考えています(コラムNo113)。本当は自身を整える前に他者に過剰に意識を向けている暇など無いはずなのです。

 この辺りを明快に表現している散文があります。

 わたしはわたしのことをして、あなたはあなたのことをする
 私はあなたの期待に応えるためにこの世にいるわけではない
 あなたは私の期待に応えるためにこの世にいるわけではない
 あなたはあなた、わたしはわたし…(以下略)
        フレデリック・パールズ

 他者に好かれようとした生き方は基本的には相手の期待に応えようとする生き方であって、自分の人生を生き切れていないのではないでしょうか。あなたが何をしても嫌う人は嫌いますし、逆にあなたが何をしようとあなたを好きな人も必ずいるもので、他者(ひと)は変えられないのです。嫌われたからと言って決してあなただけが悪いわけではありません。相手の感じ方であって、相手の考えを操作して変えるわけにもいきませんし、いい意味で諦念(ていねん)をもって生きてみるのはいかがでしょうか。

 他人から好かれることにエネルギーを費やすことでの人生の損失は大きいのです。毎日が不自由でストレスフルになります。その上、好かれるために奔走しているので自分の軸が怪しくなります

 あなたの人生の主役はあなたです。どうしたいのか、どう生きたいのかを見つめ、自分を知り(自己理解)、本当にやりたいと思うことをやって正直に生きてみる… 。どんな生き方であっても、自分の生き方・選択に自信をもって等身大で生きていくことにチャレンジしてみましょう。その上で人から嫌われるなら仕方がない。嫌われてもいいではないか…と覚悟を決めましょう。しかしそこを乗り越えふと気づくと、あなたの自己イメージは数段高くなっている筈です。

 アルフレッド・アドラーのフレーズをご紹介して今回のコラムを閉じます。

 他の人からの自分に対する評価は、その人の個人的な見方であり、
 自分の評価そのものには関係しない

 他者の課題には介入せず、自分の課題にも他者を介入させてはならない

 あなたは「暗い」のではなく「優しい」のだ。
 「のろま」なのではなく「ていねい」なのだ。
 「失敗ばかり」ではなく「沢山のチャレンジをしている」のだ

*次回のコラムは2022年12月20日前後の予定です。

★2023年★の講座予定を公開しました  2023年 講座開講スケジュール

4 件のコメント:

  1. フレデリック・パールズさんとアルフレッド・アドラーさんのフレーズ、心に響きました。


    初めて子どもを産んで小さな世界で生活していたのちに幼稚園というそれまでよりも少し広い世界に親子で飛び込む。
    振り返るとこの時期が「過剰適応」のもっとも濃い時期でした。
    自分が過剰適応なので周りも過剰適応の人だらけになっていたようで·····今思うと一生懸命くるくるくるくる回っていたように思います。

    私は子どもが2人不登校をし1人は数年間別室登校したので色々あった中でいつの間にか自分で感じて決断をする人になれるベースが出来たのではないかと思っています。

    別室に登校していた数人は異色に見られていたのでお母さんたちとの関わりも薄くあの頃は自然に過剰適応から離れられていたのでしょう。


    自分で感じて決断するベースが出来た私はのちに自分の問題を自分で解決し、自分にしかわからない自分の心地よさを作り······自分の世界を持てている実感がするのです。
    子どもの不登校は必然のこと、子どもたちが私を助けてくれた。


    あー、私はこんなところまで来れたんだなぁ·····。
    あの頃の私に「心配しなくて大丈夫だよ 」 と伝えてあげたい気持ちになりました。
    有り難うございました。

    返信削除
    返信
    1. MOONさま


      パールズのフレーズ「あなたはあなた、わたしはわたし…」何だか気持ちが引き締まりますよね。アドラーのフレーズは、自他分離の大切さ厳しさが明確に表現されていて、なるほど!と思いますよね。

      たしかに、親子が幼稚園という初めて広がった世界に入った頃から、ママ友という存在も出来たりして、知らず知らずに周りに過剰適応をしてしまっていた自分を思い出しますね。嫌われないようにいい人に思われるように…。しんどい状況を自分で作っていることにも気づかないで…ね。

      しかしMOONさんはお子たちが不登校や別室登校をしてくれたおかげで(その頃はまさかおかげでとは思いませんよね) 周りに合わせて生きることをやめ、自分の感情を感じて自分で考え決断していく…というスタンスに立つようになられたんですね!

      その頃からMOONさんは自分軸に立ち、自分の世界を持つことの心地よさを体感され始めたのですね!「子どもたちの不登校は必然最適だった。子どもたちが私を助けてくれた…」と述懐していらっしゃいます!

      MOONさんの「あー私はこんなところまでこれたんだなあ…」という、大きく広がった世界で発していらっしゃる幸せなメッセージが、とても感慨深く伝わって参りました。有難うございました!

      削除
  2. 結婚して、妻のなり、親になり 、それなりに精一杯がんばっていたなあと思い出しました。私はどうしたいか、わからなくなって本に求めたり、人の話を聞いたり、、、、

    以前次男がお母さんがイライラして不機嫌だった時は、僕たちは兄弟がいたから、楽しく過ごしていた。と話たのを思い出しました。

    先月母が亡くなりました。母は周囲に惑わせることなく、自分を生きていました。

    以前はそんな母との葛藤もありましたが、亡くなる数日まで話ができ、最後は施設でスタッフの方々と楽しくすごし、葬儀はひ孫や孫にありがとうと言ってもらって最後を迎えた母を思うと、正直に生きることの素晴らしさを感じています。

    コラムに書かれていたフレーズ
    「他人から好かれることにエネルギーを費やすことでの人生の損失はおおきい」心に響きました。
    そんな時間があれば、もっともっと自分に出来ることはたくさんある!そんな気づきがありました。

    先生がダンス再開されるコメント読ませていただいて、私も歌の個人レッスン始めました。
    自分の内なる美しい声で歌えたときは、とても感動です。

    ありがとうございます。

    返信削除
    返信
    1. ももこさま


      母上が逝かれたのですね。。お寂しくなりましたね。母上はあのご年齢には珍しいくらい”自己イメージ”が高いお方だったのですね。ベクトルが周囲ではなく、ちゃんとご自分に向かい、自分の人生を生き切られた一生だったのですね!正直に生きることの素晴らしさを見せてくださいましたね。

      そうそう! 他人から好かれることにエネルギーを費やす時間があるなら、もっと自分を生きることに使えば人生さらに充実しますよね。ももこさんはさっそく歌の個人レッスンを始められたのですね! 素晴らしい! ももこさんの一文「自分の内なる美しい声で歌えたときとても感動します」と、ありました。その内なる声…という表現がとても心に響きました。お互いにこれからもワクワク楽しみながら生きていきましょうね。

      素敵なお正月🎍を! 有難うございました。

      削除

コメントをどうぞ☆