2019年12月20日金曜日

精神的に健康で幸せな母親を子どもに与えてあげましょう

Column 2019 No.79

2020年の講座予定を公開しました☆
 2020年 講座開講スケジュール

 今回は重いテーマ「自死」について考えてみたいと思います。実は先般、ある行政に招かれて、2回にわたり、市の職員を対象に「市民の自殺予防のための研修会」で親業の視点から話してほしい…ということでした。戸惑いはありましたが、親業には必ず答えがある…を信念に、ひとまず受けることにしました。

 私の講演会及び研修会のテーマとしては初めてなので、数冊専門書を求めて学びました。近年日本における自殺者の増加は、国際的に見てもかなり憂慮すべき問題であり「…死んでいく本人だけの問題ではなく、残された家族、友人、知人にも大きなショックを与えるものであり、深刻な社会問題である…」と、述べられていました。

 そして自殺に向かってしまう背景には、身体の老い・夢が持てない…と、将来に悲観的な高齢者が多く、また年齢には関係なく喪失体験(財産・地位・名誉・家族・健康…)あるいは貧困、借金、過重労働、被災、いじめ…等々によるストレス。それらが原因となり、深刻な鬱状態に陥り、そのストレス状態から逃れる為に、大人の場合は、多くアルコール依存に繋がっていくケースが多い。そして最終的には自分で自分を追い込んで自殺への道を選んでしまうケースが多い…と述べています。

 ここからは私自身の視点から述べていきたいと思います。人間は特に深刻な鬱状態に陥ると、精神的にも肉体的にもエネルギーが極端に消耗しているので、どうしても人生に悲観的になり、自分一人では自分を救えない状態に陥ります。その時は医師も進めるように抗うつ剤の処方を、必ず受けるべき時期だと思います。しかし抗うつ剤を飲むだけでは根本的な解決にはなりません。一番大切なことは、そのかたの心のケア、つまりカウンセリングをじっくりと続けられることが理想です。カウンセリングする人は専門家でなくても構いません。長期を覚悟して本気で係わる人がいれば、重篤な鬱であっても治癒の方向に向かう例は少なくありません。

 私が感じている自死に至る一番根本的な問題・ルーツは、何といってもその人の育ってきた環境・つまり成育歴にあると思っています。破産しても、被災にあっても、いじめを受けても、死を選ばず、生きて解決に向かおうとしている人々の方が圧倒的に多いのです。それは育った環境の中に、一人の人間として愛と尊厳性をもって育てられた…という背景がどこかにあるからです。

 一方、自死を選ぶ人々の育った家族環境には、その多くに深刻な病理が潜んでいます。家族全体が病んでいることが多いのです。例えば、幼い頃から、病的で深刻な家庭環境があり、その中で、大人の葛藤に巻き込まれ、他者の人生ばかりに翻弄されたり、時には病的な大人の面倒を子どもが看る羽目になったり…と、子ども自身に「自分軸」が育つ環境が全く無かったことが多いのです。その結果、極端にストレスに弱い人間になりやすく、自分に自信が持てず、前途に悲観・絶望しやすい体質になります。その心の空洞や心の傷は、癒されない限り、大人になっても持ち続けることになります。

 深刻さの度合いにもよりますが、多くの人は思春期以降から問題が起りはじめます。例えば、無気力・無感動になり、まわりに関心が薄く、引きこもる形に陥っていく場合もあります。また心にある大きな空洞を埋めんが為に、無意識ですが、日常的に鬱的で、不機嫌に周りに人に接したり、買い物に依存したり、食行動異常(過食・拒食)になったり、アルコールに逃げたり、様々な情緒障害・神経症…等々の症状が出たりすることもあります。

 次のフレーズは子どもの問題行動を研究している研究者のことばです。

母親の暖かいイメージが子どもの心のベースになっていれば、
思春期以降によく起る問題行動(非行・暴力・いじめ・不登校
・心身症・うつ・自殺…等々)はまず起らないであろう

 私も長く親業やカウンセリングをやってきて、まさにその通りだと思います。子どもが一番愛を求めている存在は母親です。どんな深刻な状況にあっても、特に母親が精神的に健康で、その環境にめげず、すくっと立っていれば子どもは絶対に大丈夫なのです。母親が精神的に健康であれば、子どもを守れるので、環境が如何に深刻であっても、子どもは必ず育つのです。お母さんにとって子育てが辛いのは、あなたが悪いのではなく、多くは成育歴があなたの力量を超えるほど重かったのです。そしてそれをまだ持ち越したままでいるのです。

 1 自分の成育歴を理解し、一度整理する
 2 子どもを愛する練習をすることで、子どもを“愛する能力”が育つ
 3 自分を愛することは子どもを愛する原点
 4 自分の心が喜ぶこと・本当にやりたいことをやり始める

 自分を愛し始めて下さい。自分を大切にすることなら何でもやってください。一日にひとつでも、心が喜ぶことをやるのです。少しずつエネルギーに満ちてきます。子どもはいつも母親のあなたを見つめています。お母さんが幸せであれば自然に子どもも安定するのです。

 そしてあなたが楽になれば、子どもが考えていることや大切にしていることを取り上げたり、邪魔をしたりしないで見守ってあげられます。子どもの権利である我儘や甘えを、適切に受け入れてあげることもできるようになります。コラムでもこれまで色々書いてきましたので参考にしてください(コラムNo33コラムNo45コラムNo58

 親の愛を確認して育った子ども達は、自分の命を決して粗末にはできないのです。

私のすべて これからの私 それらはすべて母のおかげである
エイブラハム・リンカーン

私が今あるのは すべて母のおかげです。生涯の成功のすべては
母から与えられた道徳教育・知的教育・身体教育…のおかげです
ジョージ・ワシントン

何があっても 支えてくれた母がいたから 今の私がある
トーマス・エジソン

母は素晴らしい。僕にとっては完璧な人だ
マイケル・ジャクソン

もし目が見えたら 見たいものはお母さんの顔が見たい
辻井伸行

僕は78歳になるけど 今もお袋に思い切り抱きしめてもらいたい
尾畠春夫(11歳の時母上他界)

夜更かしして衣装を作ってくれている。
母親の愛情を感じながら滑っている
羽生結弦

*次回のコラムは1月20日前後の予定です。

2020年の講座予定を公開しました☆
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4 件のコメント:

  1. 母の愛に関しては
     1 自分の成育歴を理解し、一度整理する
     2 子どもを愛する練習をすることで、子どもを“愛する能力”が育つ
     3 自分を愛することは子どもを愛する原点
     4 自分の心が喜ぶこと・本当にやりたいことをやり始める
    この4つを親業のスキルで実行できたと思います。

    スキルの中の能動的な聞き方は愛を伝えることと共に「家の中を安全な場所にする」と気づいた時はすごい衝撃を受けました。

    これまでの育ちを理解し子どもに愛を伝えることはやはり訓練が必要でしたが多くの有名人の方が母の愛について語られているのを知ると人生の中で最大の訓練であったスキルは私の中で勲章に匹敵する気がします。


    随分昔に一度、ケーキ屋さんのショーケースに並ぶ美味しそうなケーキを値段のことは考えずに好きなだけ選んで買ったことを思い出しました。ワクワクした幸せ感を感じたのを覚えています。

    今度、もう一度やってみようと思います!有難うございました。

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  2. MOONさま

    いつもコメント有難うございます!
    子どもの精神的安定は 親の幸せ度が関係している…ということを親業では伝えています。特に子どもに一番近いところにいる 母親の幸せ度は 子どもには深い影響があります。だから "お母さんどうぞしあわせに!"と。

    それを納得理解されたMOONさんは まずご自分の幸せのために 果敢に行動されていかれました。そして家庭を子どもが安心して過ごせるように…と、子どもを守り 安全な場所を作ってあげられました。子どもに愛を伝える強力なスキル(能動的な聞き方)も一生懸命でしたね!

    お子たちは そのお母さんの温かい大きな羽の中で どんどん自分を取り戻し お一人おひとりが 「自分軸」をしっかり打ち立てながら 自立いに向かわれました。お母さんの安定した愛情が 子どもの自己価値感・自尊心を育てる為に いかに大切なことか…を MOONさんは証明されたお一人だと思います。

    これからも 一人の人間として 心が喜ぶことをやり続け お母さん 益々幸せになって下さいね。有難うございました!

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  3. 下村先生、とても重い内容の後援を2回にもわたり、さぞや心して望まれたこととお察し致します。
    今回のコラムを読ませていただき、沢山の方々に母親の存在の大切さが伝わっただろうと感じました。

    『・・・母親が精神的に健康であれば、環境が如何に深刻であっても、子どもは必ず育つ』と仰るように、幸せな母親であるためにも、人生を整理するためにも自分の生育歴を理解し、両親、家族、自分の育った環境を改めて客観的に価値判断なくみる必要があると思います。

    どんな大変な状況にあっても果敢に生きていける力は、周りの大人が子供に対して常に人としての愛と尊厳性を持って接する事ができれば、子供は自己存在をしっかりと持ちすくすくと育って行くと思います。周りに傷ついている人がいるとすれば、それは大人でも同じだと思います。先生がそうして下さっているように!

    もし自分は母親から愛をもらえなかったと思っていたり、子供の接し方がわからなかったり、自分が傷ついていると思っているならば、勇気をもって自分を見つめなおし、自分の深いところの本当の欲求を知り、それをとことん理解してあげる事、それは先生が仰る自分を愛することだと思うのです。
    自分の全てを理解し受け入れ自分を大切にする事。それが自分の軸となる事だと。
    どれだけの時間がかかっても、人生をあきらめなければ自分を癒すことはできると思います。

    自死について、とても深い内容で、コメントが長く、ちぐはぐになったかもしれませんが、どんな環境で育ったとしても一人一人の命は尊いものです。どんな人でもその存在はとても大切なものです。それを忘れずにいたいと思いました。

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  4. あきこさま


    色々と気持ちを汲んでくださり 心和みました。

    コラムに書いていますように 家庭が どんな深刻な状況の中にあっても 精神的に健康な母親があれば 子どもは育ちます。ただ 母親だって人間です。深刻な環境の中でめげそうになりながらも 親業を学びながら 必死で子どもを守って自立させたお母さんも多いです。

    中には勇気をもって 子どもを連れて家を出ること(別居・離婚)を選択し その結果 子どもを自立に導いたお母さんもあります。親業の人間関係講座では それもひとつの解決策です…と伝えています。いずれも尊い選択だと思います。

    あきこさんが仰っています。「決して諦めない! 自分自身を見つめなおし 本当の深いところの欲求を見つめて…」果敢に満たしていく! 大切ですね! そして「どれだけ時間がかかっても人生をあきらめなければ いつか自分を癒すことができる…」とも仰っています! 大共感です。 ご自分のご体験もあって力強いメッセージですね!

    返信が大変遅くなりました。これに懲りずまたの投稿を楽しみにしていますよ。


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