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Column 2024 No.131
私たちの身体には筋力があるために、立ったり座ったりの動作がバランスよくできます。呼吸・発声・食事さえもそれに関連する身体の筋肉が働いてくれなければ行うことができません。年齢を重ねてくると動くことが段々とおっくうになり、その結果、筋肉量がどんどん落ちて益々動くことがおっくうになっていきます。その悪循環で、最悪の場合は寝たきりの状態になってしまうわけですね。健康的に自立して生活していくためには、筋力は必要不可欠な要素です。
しかし朗報があります。その気になれば、年齢に関係なく筋力はつけることができる…ということです。一生、健康で若々しく生きていくためには、おっくうだな…と思ってもちょっと体を動かしてみる。日常のすべての動作に、ちょっと負荷をかけることを心掛ける…などです。また「脳」も筋肉と同様に、鍛えれば鍛えるほど強くなるそうですよ。そして最近こんなフレーズにも出逢いました。
有難いことに、“心”は筋肉によく似ている。
使うことによって鍛えられ強くなるのだ
ブライアン・トレーシー
“脳”も鍛えれば筋力(脳の力)が付いてくる。それならばトレーシーも言うように、使うこと(使い方)によって“心”にも筋力をつけることが可能であるということ…大いなる希望ですね!
こんな経験はないでしょうか。自分の中の固定観念が自分を不自由にしていることにはしっかり気付いていながら、それを思い切って手放していくことができない。また、断捨離(だんしゃり)は必要だしやりたいのに、それを始める方に体が動かない。お稽古を始めたいと思いながら、言い訳けがいっぱい出てきて結局は始めない…等々。
しかし、こんな力が私たちの中にあったらどうでしょう。この固定観念はもう要らないと思ったら、すっとその執着を手放せる力。断捨離が必要だと思ったら「さあ!やるぞ!」とすぐに動ける瞬発力・行動力。このお稽古を始めてみたいな…と思ったら「分からないけど、とにかく始めて見よう!」といった心の柔軟性・楽観性…。これらの能力を私は“こころの筋力”と表現したいと思いました。
しかし、この“こころの筋力”は物理的に鍛えるというものではないだけに、実はとても難しいものだと思います。私の経験では、心を違った方向に使いすぎると、逆に消耗して心が弱くなってしまうことさえもあり得ます。今回は私の学びと経験の中から、私なりの「こころの筋力」について、いま感じていることでまとめてみたいと思います。
哲学者や思想家の多くの先達は、“失敗を覚悟で挑み続けよ!” “逃げるな!あきらめるな!” “順境よりも逆境の方が人間を強くする”…と喝破しています。それらの言葉は私たちの弱い心を奮い立たせ、励まし、心に元気を与えてくれる場合もあります。しかしその言葉通りを受けとると、時に大切なことを見逃してしまう危険性もあります。
例えば、真の“こころの筋力”をつけてきた人々は、成育歴の中で、逆境の中にも母親に守られてきたとか、誰かの愛情を受けながら育ってきた…といった背景が必ずあります。また失敗を覚悟で挑み続けられる人々や、決して諦めないで前進できる人々の背景も同じです。愛によってその人の心の中に既に、ある程度の筋力が付いているからこそ楽観的でたくましいのです。
逃げない。はればれと立ち向かう。それがぼくのモットーだ
岡本 太郎
しかし、この基礎的な“こころの筋力”がない場合はどうなるのでしょうか。過酷な環境の中、誰の愛も受け取れなかったと感じてきた人があるとしたら、救いはあるのでしょうか…。私はあると感じています。愛に囲まれ幸せに育った人に比べると数倍もの忍耐は要るかもしれませんが、必ずその力は手に出来ると信じています。
ただベースに次のような思いがあることが必要となります。“自分を幸せにできるのは自分自身しかいない”という真実を受容できる。また“自分は幸せになる資格がある”と信じることが出来る…この辺りがあなたの中にあればその筋力は必ず手に入ると思います。
“こころに筋力”をつけるために大切なことは、やはり“ありのままの自分を愛する”基礎筋力をつけることから出発です。愛せそうにない自分を感じるなら、愛することができないあなたを、そのまま赦して大切にしてあげることから出発です。「そのままでいい、そのままでいい」とたえず自分に言ってあげましょう。
いまの一瞬のひとときを意識化して大切に生きる
心に筋力が付いていない間は、なぜか今に居れないで、未来を心配したり、過去を振り返って悔やんだりしてしまいやすいので、その都度「いま!いま!」に気づきましょう。お料理をするときはお料理に集中してみる。子どもと遊んでいるときには遊びに集中してみる。日々の慌ただしい中にもゆったりを意識してみる…。
自分が幸せな気持ちになるような何かをする
自分のパワーを未来や過去に分散させないで「いま私何がやりたい?」と、その都度自分の心に訊き、どんなに幼稚でバカげたことでも思い切ってやってみる。あなたにとって幼稚でバカげたように見えることほど、あなたの本当の欲求であることは多いのです。
面白いことが無くても笑ってみる
前回のコラムNo130のテーマですが、口角をぎゅっと上げて作り笑いをするだけでも、脳から幸福ホルモンが分泌されてくるようです。事実、おかしくなくても笑い顔を作ってみると、不思議に何となく楽しい気分になってきます。私の中でもヒットしていて、“こころの筋力”効果ありです。
一日の終わりに寝床の中で
今日はどれくらい笑えた?どのくらい遊んだ?今日は幸せだった?楽しかった?…と、それが少しでも出来ていたら、「自分を大切にできたね!」と自分を思い切り褒めてあげましょう。あなたの中の幼い子どもは、特にあなたに認めてもらいたがっています。褒めてもらいたがっています。
実は、“心”というものは、逆境や試練で強くなるというよりも、自分を愛すること、楽しむことに心を使うことで、強力に筋力が育っていくのです。そして心に真の筋力が付いてくると、逆境や試練にもたくましく耐えることができ、更にそれによって筋力はますます強化されていきます。その為にもまずは“ありのままの自分を愛する”基礎筋力をつけることは何よりも大事です。
*次回のコラムは2024年5月20日前後の予定です。
心に筋力を付けることができる とても興味深く読みました。
返信削除口角を上げるのは実行していて気持ちが上向くのを感じています。
「自分を大切にする」方法を詳しく教えていただいたのでトライしてみようと思います。
実は~の一文ではイソップ物語の「太陽と北風」を思い出しました。
自分自身にも太陽のようにいつもあたたかくしているだけで筋力がついて来るんだと・・・。有り難うございます。
MOONさま
返信削除遅くなりました。いつもコメント有難うございます!
ほんとほんと!「北風と太陽」の物語に繋がりますね。暖かい太陽の光で、旅人は自分からマントを脱ぎましたよね。まさにその通りで北風の試練は私たちの心を頑なに閉じてしまいます。
私たちもあの愛に満ちた太陽のように、自分自身に心が喜ぶことや愛に満ちた温もりをいっぱい与えてあげることで、心の筋力はついていくのですね。
これからも自分を愛し、人生を楽しんで心の筋力をしっかりと育てていきましょうね。有難うございました!