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Column 2024 No.135
“今を生きる”については、これまでもテーマを変えて何度か配信してきました。今回もそこに触れてみたいと思います。
余生という言葉ありますけどな。
余りもんの命はどこにもありませんなあ。
命はつねにまっさらですわ。
上手な舞い手さんはどこでシャッターを切っても絵になってますけどな。
それと同じで、命は“いま”“いま”“いま”常にまっさらで、
一瞬一瞬すべてが完結しているんですなあ
梯實圓和上
このメッセージは、地元のお寺さんが門徒に出されている冊子で、ご住職さんが書かれているブログに取り上げられていたフレーズです。その梯實圓和上さまが、いよいよあの世に旅立たれるとき、耳元で奥さまが「おとうちゃん、56年間 ありがとう。楽しかったね」と言われたら、和上は優しく微笑んで「今も…」と、おっしゃったそうです。梯實圓和上は最期の時まで“いま”“いま”を生きていらっしゃったのですね。
なぜ“今”のひとときが、この一瞬一瞬が大切なのでしょうか。確かに、私たちが現実に存在しているのは、今この瞬間だけです。しかも今の瞬間は、たちまち過去になってしまいます。私たちは常に呼吸していますが、私たちが生きて呼吸が出来るのは、実は、いまこの瞬間だけです。過去に帰って呼吸は出来ないし、まだ来ぬ未来に行って呼吸することも出来ないのです。つまり実際に生きて存在し、体験し歓喜できるのは“今”だけだということです。
ところが、私たちは過ぎ去ったことに、いつまでも捉われて悔いたり、責めたり…。又まだ来ぬ未来に思いを飛ばして多くの“今”を不安や恐怖の感情に捉われて生きています。その結果、“今、ここ”を生きるためのパワーやエネルギーを過去や未来に分散させてしまうため、今が完結しないまま、ただ日々を重ねることになるんですね。
一度だけの人生だ。だから、今この時だけを考えろ。
過去は及ばず。未来は知れず。死んでからのことは宗教にまかせろ。
中村 天風
さて、極少未熟児で産まれた日木流奈さんは生後の大手術や薬物の投与…等で脳委縮という後遺症が残り、身体も自力では動けず言葉も口頭では伝えられない状態ですが、ある訓練を受けられた結果、母親の介助により「文字盤」を指すことで自分の気持ち・意志を伝えることが出来るようになりました(コラムNo8)。次はその彼のメッセージです。
一瞬息が出来なくて苦しいときがあります。
でも今は息ができるので楽です。
意地悪を言われたら傷つきます。
でも今は言われてないからつらくないです。…
みんな自分から苦しい状態を続けています。
今は無い苦しみを思い続けるから苦しいのです。…
苦しい時のことをそんなに覚えていては人生がもったいないです。
実際、今の輝いたこのひとときを、すでに無い痛みに捉われてしまうのは、本当に勿体ないことですよね。流奈さんは過去の苦しみは、今は無い…と定めて、まっさらな“今、ここ”を迎え、またそこを生き切っていく。それが梯實圓和上の言う“一瞬一瞬完結された状態”を生きている姿…と言えるのかもしれませんね。
次はコラムNo128でご紹介した書籍「今日、誰のために生きる?」の中の、SHOGEN氏がブンジュ村の村長から言われた言葉です。かつての日本人は、一瞬一瞬を丁寧に生き、丁寧に味わうことで“今、ここを生きる”ことの喜びや輝きを、実感して生きていたのですね。
日本人はふだん当たり前にやっている所作(しょさ)の
一つひとつを愛していたんだ。
…息を吐いているときの自分、息を吸っているときの自分。
それをこの上なく愛していたんだ。
朝起きて家から一歩目を踏み出した時、
左足のつま先が地面を踏みしめるときの感覚。
日常の一瞬一瞬に喜びを感じていたのが日本人だったんだよ。
それでは過去に未来にと思いが飛んでしまいやすい私たちの意識は、どうしたら“今”に戻せるのでしょうか。どうしたら“今、ここ”を、心を込めて生きることができるのでしょうか。ひすいこたろう氏は、今に戻る方法を次のように述べています。
“今、ここ”に意識を戻す方法って実は簡単なんです。
身体に意識を向けたとたんに“今、ここ”に戻れるんです。
身体とは五感のことです。…
身体はこれまで一度だって過去に飛んだり、
未来に飛んだりしたことはないからです。…
身体はいつもここにいるんです。
身体こそ最も身近な大自然なんです。…
ゆったりそして丁寧に五感を味わえばいいのです。
五感とは視覚・聴覚・嗅覚・味覚・触覚で、それらを意識して見つめ、嗅ぎ、味わってみることで“今”に返れますよ…と、氏は提言している訳ですね。それら感覚の一つひとつを、ゆったりと味わうことで、確かに生きている感覚が呼び戻せますし、生きている喜びや実感が起き湧いて参ります。
そして私が心掛けているのは「呼吸」です。“人生に迷ったら自分に返る”のフレーズをこれまで何度か取り挙げましたが、生きることに迷った時、自分の呼吸を思い出してみるのです。そして目を閉じ意識的にゆったりと、息を吸い、息を吐いてみる方法です。これを2~3分間続けます。すると自然に“自分軸”にすっと立ち返ることができます。“人生に迷ったら自分の呼吸に戻る” これは私が辿り着いた“今、ここ”に戻るための、簡単で効果的な方法のひとつです。
日常を丁寧に過ごすこと。とことん丁寧に。
SHOGEN
*次回のコラムは2024年9月20日前後の予定です。
あの世に旅立たれるとき優しく微笑んで「今も…」と、おっしゃった梯實圓和上・・・今を生きるを頭ではなく心で実行されていたんですね・・・。
返信削除コラムを読んで今を生きるとは・・・ご機嫌でいる自分を自分でつくることなのかな?と思いました。
普段過ごしているともう忘れていたと思っていた嫌な過去の出来事を思い出したり、ふっと将来のことに考えが及んで不安になったり・・・嫌な気持ちを作るのに忙しくしてるなぁと思います・・・。
そんな瞬間がやってきたら先生の教えてくださった「呼吸」を実践してみようと思いました。
「自分軸」に戻してから自分オリジナルのご機嫌でいられることをやってみる・・・・・。
どんな感じになるかやってみます。
ありがとうございました。
MOONさま
削除いつも有難うございます!
悌實圓和上さまがあの世に旅立たれる時の「今も…」の言葉の中に、まさに頭のレベルではなく、”いま” ”いま”をまっさらな気持ちで生きていらした生きざまが伝わってきますよね。
MOON さんのおっしゃるように”今を生きる”ということは過去でもない、未来でもない。今を呼吸し今を感じて、今を喜んで,楽しく御機嫌で生きていくことだと思います。
人生に迷ったり混乱したら、ゆったりと無になって自分の呼吸に戻る…MOON さんに理解頂いて心弾む気持ちです。有難うございました!”