2025年7月20日日曜日

「待つ」ということ

 2025年 講座開講スケジュール

 下村亮子チャンネル『 TRUST YOUR FEELING - あなたの中の答えを信じて 』

Column 2025 No.143

 子どもが育っていく上で「待つ」と言う“親の立ち位置”は非常に大切です。以前にもコラム(No.88)で取り上げたことがありますが、今回は少し違う角度からあらためて「待つ」ということを考えてみたいと思います。

「待っているから」

心満たされるまで花と話してくるがいい
大丈夫 父さんはここで待っているから

まぶたが つらくなるまで星を数えてくるがいい
大丈夫 父さんはここで待っているから

いま君にしてやれること 父さんには何もない
ただひとつだけ 君を待っていよう

そんなに急がなくても 走らなくてもいい
大丈夫 父さんはここで待っているから

君には君の歩き方 生き方があるはずだ
大丈夫 父さんはここで待っているから

今君にしてやれること 父さんには何もない
ただひとつだけ君を待っていよう

作者不詳

 我が子への深く広い愛の気持ちがこもった詩ですね。こんなに広い愛の中で育った子どもは決して急かされることなく、ゆったりと自然と語ることが出来、また自分自身と語りながら自分という存在を見つめ、真の自己愛・自己価値感に目覚めていくことでしょう。

 私たち多くの親は、子どもを急かせていることには全く気付かず、子どものことを思えばこそと、特に勉強・宿題等々…結構うるさく関わっていないでしょうか。以前に“勉強に集中できない”という小中高の学生数人に親への思いをインタビューしたことがあります。

中1女子「うちの親は成績をすぐに友達と比べたり、平均点を気にしてしっつこい」
中3男子「こんな点取ってたら高校は無理よ…と嫌味を言う」
小5女子「今度成績が下がったらおこずかいを下げると卑怯なことを言う」
高1男子「いい会社に入りたかったら、もっと気合いを入れて勉強して、いい大学に入らなきゃあ無理よ…と偉そうに言う。大きなお世話だ!」
中2男子「宿題は済んだの!とか、試験は近いんでしょ!とか毎日毎日しつこく言う。早く家を出たい!」

 子ども達の切ない心情がひしひしと伝わってきたものです。この中の誰かが言っていました「勉強しようというエネルギーが無くなる瞬間です」…と。

指導の基本は 本人が気づくための時期を待つことです
羽生 善治

 子どもが自信をもって社会を生きていく為には色々な力が必要になります。自立心・自律力・判断力・選択力・やる気…等々。実は子どもは、自分の人生には責任を持って生まれてきていますし、責任を取れる力を持っています。だから子育てには「待つ」と言う親の姿勢が大切なのです。先ほどご紹介した子ども達の哀しい心情を育ててしまう親御さんは、熱心なあまり、過剰に子どもの人生に係わり干渉しています。結果的に、子どもは自分の人生に責任が持てなくなります。

 子どもの心が独り立ちするまでには散漫・逃避傾向など…親から見れば、いわゆる“いい加減さ”を見せる時期があります。その多くは、本当の自分が分からなくなって、自分から迷い子になってしまった時の逃げ場でもあり、自分自身を見つめ直すための時間でもあります。親にとっては、そこを静観して待てるか否かの正念場でもあります。

 子どもは、そのいい加減さを親からある程度認められながら、自分なりに心の積み木を積み重ねていく存在です。あるK君は思春期、かなりの迷路にはまって親御さんは大変な思いをしておられました。その子が言いました。「うちの母さんはあの時よく俺を見捨てなかったと思う」…と。自分のやっていることは親に迷惑をかけ、心配をかけていることを解かっているのは、誰よりも当の本人なのです。

 子どもは本来、無意識かもしれませんが、自分の成長にとって必要なやりたいことをやって、そこで気づいて成長していきたいという、「自己教育力」「自己管理能力」を持っているのです。待っていれば自ず(おのず)と、子どもはやりたいことをやって幅を広げ、生まれもった本来の力を発揮してくるのです。そう!子どもは見捨てなければ育つのです。

待つ 信じる 許すことが出来る監督
山下 智茂(高校野球指導者)

 彼の言う“監督が持つべき資質”は、親の資質としても同じことが言えると思います。しかし親も人間です。子どもを見守りじっと待ってみる…その姿勢は一朝一夕にはいきません。子どもに望む態度が、実は親の私たちにまず出来ているか否かです。あなた自身が“自分の親にとって都合のいい子”に育っているかもしれません。すると知らず知らずに子供を支配してしまうのです。

 自分の成育歴を一度眺めてみましょう。そして一度真っ直ぐに見つめることが出来たらOKです。あとは優しく自分を赦して、焦らず、急がず真の自立を目指しましょう。自立とは自分の頭で考え自分の足で歩む力です。自身がぐらぐらして周りの評価を気にしたり、他者と比べたりしていると、我が子のためと言いながら、他者の目から見て評価のいい子を育てようとしてしまいます。親が出来ないことは子どもに望むことはできません。

 親だって挫折はあっていいのです。起ることすべて体験です。体験から学びながら、魂を深く強くしていきましょう。自分の心が喜ぶことを子どものように無邪気にやってみてください。幼い頃からやりたくてやり損ねてきたことはありませんか。誰に笑われてもいいのです。心が幸せに感じることをやり始めて下さい。親自身が幸せになることは子育てのポイントであり、答えでもあります。心に余裕が出来ると、子どもを俯瞰できるようになります。待てるようになります。親のあなたが、ジクソーパズルの一番初めに置くべき「ピース」なのです。

*次回のコラムは2025年8月20日前後の予定です。

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