2025年10月20日月曜日

子どもの人生は子どもに返そう

 2025年 講座開講スケジュール

 下村亮子チャンネル『 TRUST YOUR FEELING - あなたの中の答えを信じて 』

Column 2025 No.146

 「うちの子はもう大人の年頃なのに、毎日ネットやゲームばかりで、将来どうなるのだろう…と心配です。接し方を教えて下さい。」といった質問を受けることが度々あります。

 確かにメディアが多様化した時代、その悪影響からいかに子どもを守っていくのか、放っては置けない時代だと思います。それに対する詳しい対処方法はまたの機会に譲って、今回はテーマに添って(ご質問を含めて)考えていきたいと思います。

 「子育て」で一番大切なポイントとは何でしょうか。それは子どもの人生は子どもに返していく姿勢です。親業の創始者のトマス・ゴードンは次のように述べています。

子どもをある特定のものになるように望んではいけません。
ただ彼自身になることだけを望みなさい

 ところが私たち親はともすると、“あなたの生き方は辞めてお母さんなりの人生を歩みなさい”と知らず知らずに接してはいないでしょうか。子どもが黙って自分と対峙しているときに「黙っていては解らないでしょう!何か言いなさいよ!」と茶々を入れたり、子どもが自分の好きなことをして遊んでいるときに「そんなことしている暇があったら勉強しなさい。テスト近いんでしょ!」と急かしたり、“しんどいよ…”とサインを送っているのに平気で無視して親のやらせたいことを押し付けたりする。

 親の力が強いほど、親の思う通りの一見 “素直な子ども” “見かけのいい子”が育っていくのですが、子どもの方はどんどん生きる方角が見えなくなっていきます。自分の人生を自分自身で積み上げてきたという実感には乏しいので、土台が弱く人生のどこかで挫折がきやすいのです。

 以上「過干渉」の害について考えてきましたが、現代は「放任」が問題となっているケースが多いと感じています。親が仕事を含め、自分の人生に忙しくて子どもを見ていない。つまり子どもと共に生きて体験をしていないのです。子どもを見ていないから子どもの感情を多く見逃してしまう。結果、受容の言葉や愛情表現の言葉がけが極端に希薄で、子どもは愛情飢餓感の中で、心が育たないままに青年期を迎えます。逆に、絵本の読み聞かせや親子での楽しい遊び体験、自然とのふれあい…など、親との愛情に溢れた豊かな体験があれば、色々回り道があっても、やがて自分の人生に回帰できる可能性は十分あります。今の時代、メディアに全く触れさせないというわけにはいかない時代ですが、我が家でネット以外の楽しみをしっかり体験させてあげることはとても大切なのです。

教育は、子どもをより良い人間に育てることではなく、
彼が本来持っている素晴らしい資質を引き出すことである
ジョン・ロック

 ジョン・ロックの言う通り、子どもが潜在的に持って生まれている能力を信じて、その可能性を最大限に引き出していくことこそが真の教育です。あなたの子どもはあなたの欲求を満たすために生まれてきたのではありません。あなたを幸せにするために生まれてきたのでもありません。一度しかない自分の人生を楽しみ、実感して、なりたい自分になる為に生まれてきたのです。私たち親は、子どもがなりたい自分になれるように、その可能性を引き出してやらなければならないのです。それが真の教育です。

 偉人について書かれた書籍を見ますと、世界に立派な貢献をした偉人たちが、必ずしも幼い頃から親が望むような理想的な子どもではなかったようです。例えば、

 発明家トーマス・エジソンは学校でも変わった発言をする子どもで “エジソンの脳は腐っている”と言われて中等科を3ヶ月で退学させられました。万有引力の法則の発見で有名なアイザック・ニュートンは小学校では劣等生といわれていた。アルベルト・アインシュタインは4歳までしゃべれなかったし文字が読めるようになるのもずっと遅かったと言われます。アニメの王様ウォルト・ディズニーは「アイデイアが乏しい」と言う理由で新聞社を首になった…等々。

 やがて大きく世界に貢献したこれらの人たちが、幼い頃から際立ったその素質が見えていたわけではなく、実はその子らしくやりたいことをやって育っていた普通の子どもだったのですね。学校や世間には受け入れられなくても、そんな彼らを、急(せ)かさずにやりたいことをやらせ、そのままに見つめていた大人たちがいたのだと思います。

 一方、大人の思考に合うようにと急かされたり、逆に子どもの存在を無視して放任したり、その結果、近年ストレスフルな子どもたちが大人の気づかないところでどんどん育っています。ストレスフルな子どもたちの心の中は、寂しさや自分の人生を奪われた悲しみ、親への怒りや敵意などで充満していますが、それが必ずしも親に向けられるとは限らず、やがて社会へと向けられて反社会的な行動を起こすこともありますし、逆にその怒りが自分自身に向けられることも多く、鬱や心身症で苦しんでいる子どもは多いのです。

子どもは自分の意見が尊重され認められることで初めて
自信をもち、自分を表現する力を身に付ける
カール・ロジャーズ

 子どもは自分の考えや意志を大切にされることで、自分らしくいることが出来、自分らしく生きることが出来るようになります。子どもの成長には親の援助が不可欠なのです。そして子どもを一人の人間として尊重し認めていくにはまず“親の自立”が一番に問われます。

 親自身が自立して、自分の人生に責任を持ち、実感して生きるようになったら、自然に子どもの感情を掴むことが出来、子どもが語りたいことをしっかり受け止めることが出来るようになります。その結果、子どもは自分に自信をもって生きることが出来るようになり、やがて自分の生きたい人生が見えてきます。その結果、初めて子どもは自分の人生に専念できるようになるのです。

 一度しかない子どもの人生は子どもに返していきましょう。返していける親になる為には、親も自立して自分自身の人生を充実していくことしかありません。

*次回のコラムは2025年11月20日前後の予定です。

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