2025年11月20日木曜日

如何なる苦しみも来ては去っていくもの

 2025年 講座開講スケジュール

 下村亮子チャンネル『 TRUST YOUR FEELING - あなたの中の答えを信じて 』

Column 2025 No.147

 確かに、如何なる苦悩に圧倒されたとしても、逆に歓びに有頂天になったとしても、気付くとその感情はどこに行ったのか、いつのまにか私たちの心から去っていることに気づきます。ところが鬱体験をしているときの自分は、えてしてその苦しみをしっかりと掴んでしまっています。その感情を俯瞰していれば、自然に去っていくのかもしれないのに、感情に執着した状態なので、最終的にはその感情に圧倒されて身動きできなくなってしまいます。“感情は来ては去っていくもの” ということを理解しておくことは “上手な感情とのつきあい方” の重要なポイントです。

  … 不快感が表に出てくるのを目撃することは
  殆どそれが去っていくのを目撃していることに等しいのです
  アンディ・プデイコム(臨床瞑想コンサルタント・元仏僧)

 私たちは多く、辛い感情は感じたくないので、抑え込んだり逃げ出したりしやすいものですよね。しかし、感情は生き物ですから、押さえ込んでもやがて何かの形で表面化してきて、結果的に心身に影響を与えてしまうことになります。

  こと感情については、沈めたものは必ず浮かんでくるのです。
  感情そのものとしておもてに出てくることもあれば、
  何らかの形で行動に影響を与えだすこともあります。
  時には肉体的な健康に影響を及ぼすことさえあります。
         アンディ・プデイコム

 「そんなことで落ち込んでは駄目!」と、つい自分を責めてしまいやすいのですが、現れてくる感情を抑え込むのではなく、逃げるのでもなく、静かに寄り添ってあげながら “そう感じているあなたよね。苦しいね” と共感を示してあげることは、「親業」が大切にしている自分自身への共感的対応で、とても効果的な感情の昇華方法です。自分自身への共感はセルフカウンセリングの効果があり、ストレスを和らげる強力な方法でもあります。

 まず自分に起こってきた感情に気づいて、それを明確にします。気づく力とはマインドフルネスになる力(コラムNo141)のことであり、「今、ここ」の自分に、リアルタイムに気づいていることでもあります。

  私が今感じているのは罪悪感だな…。
  こうして明らかにされた感情はパワーを失い、
  罪悪感は陽光に照らされた雪のようにやがては溶けていくのです
         藤井 英雄(精神科医)

 自分の感情を恐れることなく、ただ気づき続けることで自身の中で明らかになったら、その感情は自然に静かに去っていくものだ…と藤井氏も述べています。“感じ切る”ことから逃げないこと…それが上手な感情の手放し方です。私たちは常に心地よい感情の中にいたいという強い欲求があります。しかし人間をやっている以上は、様々な感情に出逢うのがあたりまえなのです。

  本当の幸福とはどんな感情がわいてきても
  心地よくいられる能力のことだ
         賢者の言葉

 如何なる感情に出逢っても平静心で居られたら、どんなに人生は豊かになることでしょう。私たちは感情をあまりにも重いものとして捉え、無意識に格闘して、何とかクリアしていこうと日々奮闘しています。しかし賢者は伝えています。

  幸福はただの幸福だ。大騒ぎするものではない。
  来ては去っていくものだ。悲しみもただの悲しみだ。
  大騒ぎするものではない。来ては去っていくものだ。
  いつも心地よい体験をしたいという欲望を捨て、
  同時に不快な経験をすることへの恐れを捨てることが出来れば、
  やがて静かな心が手に入る
         賢者の言葉

 感情にいい悪いはありません。賢者が伝えるように、起き湧くいかなる感情もただ大切に感じていると、やがて過ぎ去っていくのです。感情に捉われないで俯瞰して眺める。つまり、感情と少し距離をとる視点があるといい、ということですね(コラムNo.140

  感情が浮かんでは消えていくのに任せることを学び、
  心の奥にこの意識と視野を保っていれば、
  どれほど厄介な感情が襲ってきても、
  それがどんなに強烈でも常に平気だと感じられてきます
       アンディ・プデイコム

 如何なる苦しみも来ては去っていくもの…という視点は、私の感情に対する感じ方を大きく変容させてくれました。特に次のフレーズは私の生き方、取るべき態度、考え方に大きな変容をもたらせました。

  如何なる苦悩も、現れれば必ず消えるものであるから、
  消え去るのであるという強い信念と、
  今からよくなるのであるという善念を起こし、
  どんな困難の中にあっても自分を赦し人を赦し、自分を愛し人を愛す…。
      五井 昌久(哲学者・宗教家)

 多くの哲学者や賢者は “如何なる感情も来ては去っていくもの” つまり “現れたときは消えていくとき” と伝えています。感情は厄介な存在と思われやすいのですが、実は感情は私たちの心のバランスをとってくれている存在であり、私たちの成長を助けてくれる存在なのです。私自身、苦しみに圧倒されて、落ち込んだり動けなくなることもありますが、その苦しみの間(あいだ)、無意識ですが、必死で自分の本質と対峙し内省し、哲学をしている自分に気づきます。それ故、その感情が去っていった時、自分自身の中に深い気づきが生まれていることに気づきます。私たちは愛の中に生かされ、実は無駄なことは何ひとつ起こっていないのだと、その辛い体験に感謝することがあります。

 私はこれからも、如何なる感情が起ろうとニュートラルに捉えて、怖れず構えず真正面から感じ取っていこうと思っています。そして去っていこうとしているそれらの感情を決して掴まないで、感謝して手放していこう…と。そして五井氏が伝えているように、“これからよくなる!” と言ったポジテイブな捉え方を忘れず、如何なる自分も赦し丸ごと自分を愛していこう…と思います。こうした自分自身への愛や赦しは、やがて自然に、周りの環境や人々を赦し愛することに繋がっていくのではないでしょうか。

*次回のコラムは2025年12月20日前後の予定です。

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