Column 2015 No.19
あなたが何気なく自分にかけている言葉が、あなたの人生を創っているとしたら……。
心で呼ばないものが 自分に近づいてくるはずがない
- 稲盛和夫 -
もしもあなたが、例えば「人は信用できない」という言葉を(内面的な言葉を含めて)自分にいつも投げかけている人だとしたら、恐らくあなたの周りにはあなたにとって信用できない人々が多く引き寄せられているかもしれません。そしてあなたの、周りへのその過度の警戒心や猜疑心は自分で自分の人生を結果的に不自由にし、あなたにとって、とても生きづらい人生を創っていくことになるでしょう。
あなたの人生の主役はあなたです これは親業の人間関係講座のキャッチフレーズですが、私たちは一人ひとり、肯定的にも否定的にも自分の人生を創造する力があるということを示しています。
次のような実験を聞かれたことがありますか?
同じ条件で育てた三つの花の苗を、それぞれの植木鉢に植えます。養分も水も同じ条件で与えます。しかし三つの花のうち、一つには、毎日「かわいいね!きれいだね!ありがとう!」と肯定的な言葉をかけます。もう一つの花には「なんて醜いの!最悪!」みたいなネガティヴな言葉がけをします。残る一つは毎日完全に無視をします。さて結果はどうなったでしょう?
不思議ですが、これをご飯粒でやっても、果物でやっても結果は同じになったといいます。三つの花の中でも一番無残な結果となったのは意外ですが、無視を続けられた花。続いてはネガティヴな言葉がけをした花で、これもかなりひどい結果だった。しかし、毎日肯定的な言葉がけをされた花だけは、色鮮やかに美しさを保っていたそうです。
まだ今のアカデミズムから正式に認められた実験ではないものの、“言葉”がもつ不思議を考える上での示唆はあるのではないかと思っています。
私自身の体験も話してみます。
私は、幼いころから大家族の中で育ちました。その大家族の「衣食」をまかなっていくために私の母は、朝は四時に起きて家族の食事の準備、夜は一番遅く床に就く毎日で、いつも物悲しい表情で孤軍奮闘していました。そんな母を見て育った私は、“人生は苦労が多いものなんだな”という定義(信念)をしっかりと身につけたようです。
母があまり幸せそうではないので“私は幸せになってはいけない。幸せにはなれない”その感覚に近いものを子供心にすでに持っていたと思います。それでも子供時代は無邪気に楽しく遊んだ記憶は沢山あります。しかしやりたいことを思い切りやれる思春期には……その“振り”はできても心からは楽しめず、孤独で本ばかり読んでいました。おまけに思春期後半にはとても苦しい鬱状態が一年近く続きました。不幸そうな母をじっと見つめてきた為に、色々な感情を抑圧してきたことが原因ではありますが、“幸せになれない、なってはいけない”私のその定義通りの人生を呼び寄せたことでもあります。
ところがその鬱状態から、いよいよ立ち上がれる日が到来したとき、本当に不思議な感覚なのですが、私の中から力強い言葉が湧き上がってきたのを今もはっきり覚えています。
「私はもう母の犠牲にはなるまい!(影響をうけまい!)」
「本当にやりたいことをやって私の人生を取り戻そう!」と。
私はそのとき一人の人間として立ち上がったのです!無意識ですが生き方の定義を創り直していたのです。
「私は幸せになる!」「人生は苦労ばかりではなくもっとシンプルで面白いものかもしれない!」という新定義に! そして私は誰ともつるまないで、気持ちの赴くままにひとりで美術館に、映画館にショッピングに……と足を運びました。恐る恐るでしたが自分を取り戻すために!
しかし“楽しいなあ”と思う反面“私ひとりがこんなに楽しんでばかりいてはいけない”と、どこかで習性的に母を想い、旧定義に逆戻りしてしまいそうな自分があるわけです。その度ごとに私は確認をしました。母の人生を創造しているのは母なのだ!…と。私はもうハンドルを旧定義に戻そうとは決して思わなかった。まだまだ充分ではありませんでしたが、徐々に私の人生は変わっていきました。
視点(定義)が変わると人生は変わる
これは私の確信ある価値観です。もしもあなたの人生があなたにとって満足いくものでないとしたら、新しい定義(視点・意味づけ)に創りなおしてみてください。人生の軸はその方向に必ず動いていくでしょう。
しかし人生はいつも思い通りにはいきません。山あり谷ありです!よく祖父が言っていました。「人間は煩悩や挫折があるからこそ成長するんだ。魂の奥深い生き方ができるんだ……」と。 一瞬一瞬まわりに起きわいてくる事象に、私たちがそれをどう定義づけ、意味づけ、どう方向づけていくのかで各々の人生は違った形で創造されていく。
自分の本当の感情に注意を払いながら、それを受け入れ、気づき、手放したり、定義しなおしたりしながら、お互いに生きたい人生を創造していきましょう。自分自身を愛せるような理由をできるだけたくさん見つけて、自分の魂が喜ぶような言葉をかけてあげましょう!
私たちは自分の人生の創造者なのです! あなたに代わって、あなたの人生を創造できる人は誰ひとりいないのです。
*次回のコラムは1月30日前後の予定です。