✨ 下村亮子チャンネル『 TRUST YOUR FEELING - あなたの中の答えを信じて 』
Column 2025 No.144
ノーベル物理学賞(1973)を受賞した江崎玲於奈氏は「ノーベル賞を取る為の何か条件はありますか」というインタビュアからの質問に対して、とても興味深い答えを述べています
師匠は持っても依存しない方がいい。考えは受けてもいいが大先生にのめり込まない
どんなに偉い先生であっても、のめり込まない。つまり崇拝しない方がいい。いつも自分の頭で考え、自分から来るアイデイアを大切にすることだ…ということを伝えているのだと思います。実は私の祖父も同じことを言っていました。過去コラムにも書きましたが、再び取り上げてみます。次のフレーズです。
本を読み過ぎない。人の話を聴き過ぎない。人を崇拝しない。
本を読むことは大切だが読み過ぎてはいけない。人の話を聴くことは大切だが聴き過ぎてはいけない。人を尊敬することは当たり前だが、他者を自分の上に置いて崇拝してはいけない…と。 その頃の私には祖父が言っていることがよく理解できませんでした。でも今は解かります。その頃、私は人生に悩んで、宗教にのめり込んだり、お風呂の中にまで本を持ち込むほど本に執着していた私を心配して、伝えてくれたのだと思います。「亮子どんなに周りに答えを求めても亮子にとっての本当の答えは外には無いんだ。答えは亮子のここにあるんだよ」…と言って自分の胸を叩いて教えてくれました。
本を読むことも人の話を聴くことも大切だが、それらが過ぎると本当の自分自身が解からなくなったり、自分から迷い子になる危険性がある。いつも自分に着地しておくことの大切さを常に語っていました。
脳科学者の茂木健一郎氏は「…読んだ本の高さだけ、世界が見えるようになる」と言っていましたが、確かにその人の世界観、価値観、人生観は読む本の数だけ広がり深まると思います。祖父も常に本を読んでいました。しかし彼は自分の真実をいつも大切にすることを忘れていなかったのだと思います。
個性的な芸術家として知られる岡本太郎氏に次のようなフレーズがあります。
僕にとってのプライドと言うのは絶対感だと思う。
僕がバカであろうと非力であろうとそれが俺だ。
そういう自分全体に責任を持って堂々と押し出す。
それが俺にとってのプライドだ
彼は他者を崇拝せず、至らないままの自分を受容して、しっかりと自分自身に着地して自分の世界を堂々と表現していった芸術家でした。彼の次のようなフレーズもあります。
何かこれと思ったら他人の目ばかりでなく
自分の目も気にしないで委縮せずありのままに生きていけばいい。
つまりダメなら駄目人間でいいと思って駄目なりに制約を受けないで生きていく。
そうすれば何か見つけられるチャンスがおのずから開けてくる。
一日も早く実行してみるといい
誰かを崇拝してしまうとその人の言葉に支配されて、無意識の制約を受け、自分本来の自由性をどんどん失っていきます。トーベ・ヤンソンが「あんまり誰かを崇拝しすぎるとほんとうの自由は得られないよ」とムーミンに語らせていますがその通りだと思います。人に合わせた不自由な人生ほど堅苦しく面白くない人生はありません。人を崇拝するという背景にある危険性に私たちは気づく必要があります。
ここで「知識と智慧」について考えてみたいと思います。“知識”は事実や情報を知っている状態を指し、一方で“智慧”は知識を理解しそれを応用して適切に判断・行動できる能力、とも言われます。知識 は知識人の書籍や話を通して、あるいは周りの人々の言動等を通して情報を学ぶことであり、智慧 はその“得た知識を生きること”で得られるものです。その人なりに試行錯誤しながら自身を俯瞰したり内省したりすることで、つまり“知識を生きて熟成していく”ことで智慧となっていきます。その智慧は一人ひとりの中に重ねられていく貴重な魂の歴史とも言えるでしょう。「智慧は知識に勝る」と言われる所以です。
祖父が伝えてくれた、自分不在のままに本を読み過ぎたり、人の話を聴き過ぎる…等々の危険性。人や周りを崇拝して生きるということは、自分の真実・価値に気づかず、いつまでも知識の積み重ねだけで、その知識が智慧に熟成されることがないままに、“もの知り”の範疇で終わってしまうことにもなるでしょう。
本を読んで、自分の真実の中で反芻(はんすう)して感じてみる。人の話を聴いて鵜呑みにするのではなく、じっくりと自分の真実の中で感じてみる。すると、その人の心に響いたものは、自然に生活の中に生かされ反映されていくことになります。そうやって感じたり体験することで、その人の知識は智慧となり、ますます円熟した人格となって広がっていくことでしょう。
自分軸をもってすれば、読書も大切。人の話を聴くことも大切。人を信頼することも大切。学びというそれらすべての経験は、熟成を通して智慧となっていく大切な“素材であり原料となる要素”ですから、学ぶことは基本的に重要なのだということを理解しておくことは大切です。
あなたが目的地なのに なぜ旅を続けるのですか
賢者の言葉
自身の中の智慧から来た“答え”や“Feeling”はいつも私たちにとって最強の味方であり真実です。私やあなたの人生に関する感度は、私やあなた以上に冴えている人は、どこを探してもこの世には誰ひとりいないのだ、ということをお互いに本気で信頼し始めませんか。
*次回のコラムは2025年9月20日前後の予定です。